戦国時代で部活経験を活かして戦う少年たちを描いた映画『ブレイブ ‐群青戦記‐』。
引き込まれる地獄絵図なスタート&青年マンガ的な面白さに惹き込まれるものがある映画で、最初から最後まで楽しめる面白い映画でした。
どちらかといえばちょっと残酷な青年マンガ系映画がお好きな方、原作に興味が湧くような実写化映画がお好きな方におすすめ!
映画『ブレイブ -群青戦記-』の作品情報
あらすじ
スポーツ強豪校/星徳学院の弓道部に所属する、歴オタの男子高校生/西野蒼。
しかし蒼は大会・優勝などに興味がなく、実力があるのに本気を出さないことを同じ弓道部に所属する瀬野遥に咎められながら平穏な日常を過ごしていました。
そんなある日、突然周りの街が消えて戦国時代の野武士たちが現れ、教師から生徒まで見境なく切りかかってくる異常事態が発生。
蒼も斬りかかられ手を負傷しますが、剣道部に所属する松本考太が助け出してくれました。
ボクシング部/黒川敏晃・薙刀部/今井慶子・フェンシング部/成瀬勇太・空手部/相良煉・アメフト部/高橋鉄男・野球部/藤岡湯起夫たちも野武士相手に戦いますが…。
さらに軍勢を引き連れた織田信長の家臣/梁田政綱と名乗る人物の襲撃を受け、人質として数人の生徒たちを連れ去られてしまいます。
生徒たちが困惑する中やってきたのは、先程とは別の軍勢…今川軍の家臣/徳川家康。
歴史オタクの蒼は武将たちの名前・言動から、自分たちが戦国時代の桶狭間の戦い直前にタイムスリップしていると生徒たちに告げます。
何とか仲間を取り戻そうとする蒼たちは自分たちが未来から来たことを家康に告げて取引を申し出るのですが、戦いの先陣を任されることになってしまいました。
そこで生徒たちは特進クラス中心の現代に帰る方法を模索する脱出チーム、考太を中心とした仲間を救出するために戦うアスリートチームに分かれることにしたのですが…。
予告動画
動画リンク
映画『ブレイブ -群青戦記-』の感想
【面白ポイント】
- 惹き込まれるスタート
- 青年マンガ的な面白さ
- 安心の結末
惹き込まれるスタート
なかなかの地獄絵図から始まる映画で、バッドエンドとかドロドロした人間模様とかが好きなものとしては惹き込まれる魅力的なスタートだったかなと思います。
最近の映画だとほのぼの日常→ストーリー展開というスタートが多いイメージがあるのですが、ここまで絶望スタートなのは新鮮で意外性がありましたね。
たくさんのキャラクターが登場した時にはうっ…と思いましたが、部活動のおかげで名前は覚えならなくても部活名で人物の判別ができたので良かったです。
あと冒頭から「人質を助ける」という、納得のいく戦う動機・目的があったのも良かったですね。
学校内の部活という特殊な集団ならではの絆とか暑苦しさとマッチしていたし、若さ・成績・実績があるがゆえの万能感・自信みたいなのも感じられて…。
自分だったらそうはならないなとは思いつつも、キャラクターの言動に納得のいくところがあって良かったと思います。
気になる部分がない・完璧というわけではないけど…良いところ・納得できるところ・魅力がちゃんとあるおかげで、そこまで気にならなかったですね。
歴史系の映画はあまり観ないのでどうかな…と不安もありましたが、惹き込まれるスタートとちゃんと映画内でわかりやすい解説があることでちゃんと楽しめる映画でした。
青年マンガ的な面白さ
やはり原作が青年マンガなためか、実写化映画でも青年マンガ的な展開・演出・魅力が多くなっていましたね。
主要キャラであっても味方もバシバシ倒れていくし、立ち向かい方も泥臭い感じが多くて…少年マンガのようなカッコよさ・爽快さはあまりなかったかなと思います。
印象としてはマンガ『進撃の巨人』に近かったですね。
突如現れる敵・蹂躙される人々・戦う若者・倒れゆく仲間たち・ちょっとした残酷さ・怯えながらも立ち向かう主人公とか、全体的な雰囲気が似ていたかなと思います。
あとは戦国時代にタイムスリップするというテーマ・向こうでできた恩人とかを思うと映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』にも似ていたかな。
どちらかといえば青年マンガ的・大人向けアニメといったテイストの映画だったかなと思います。
なので逆にいうとリアリティーが〜とかSF設定が〜とか考えると、もしかしたらうーん…となる映画だったかもしれないですね。
あくまでも青年マンガ的な面白さなので。
あと原作に忠実な実写化映画をお求めの方だと、今作は結構原作とキャラの設定・展開・印象が変わっているので…なんだこりゃとなるかもしれません。
なのでどちらかといえば青年マンガの実写化映画をお求めの方、原作に興味があるけど手を出せずにいるという人に向いている映画だったかなと思います。
私は今作はめちゃくちゃ面白かったと思っていますが、原作を先に知っていたら…と思うと、こういう感想にはならなかったのではないかなと感じました。
安心の結末
結末に関してはどんでん返しとか意外性とかなく、だよねっという安心感のある締め方で良かったかなと思います。
エンディングは正直、家康が倒された時点で想像がつきました。
なので意外性を求めている方には物足りなさがあるかもしれませんが、個人的には安心感・安定感みたいなものがあって良かったと感じました。
みんながみんなハッピーエンドというわけではないというのも、青年マンガ的だなぁって感じで良かったです。
終わり方の印象はアニメ『鋼の錬金術師』に少し似ていましたね。
マンガじゃなくて、アニメ版無印の鋼の錬金術師に似ていたので…好みは分かれるかもしれませんが、個人的には好きでした。
まぁ…あんな惨劇があった学校になんでみんな平然と通っているの?とか、ストーリーとは別の疑問はあったりしますが。
そこは考察次第ということで、個人的にはそこまで疑問を引きずることはなかったかなと思います。
映画『ブレイブ -群青戦記-』の考察
【考察ポイント】
- 不破が戦国時代に行った理由
- タブレットが使えている理由
- ラストの学校シーンの意味
不破が戦国時代に行った理由
超優秀だった不破は霊石のことを調べていてタイムトラベルできると知り、全てを破壊して生きがいのある人生を送るために戦国時代に行ったのではないかなと思います。
「戦国時代は良いぞ。くだらない偏見やレッテルも何もない。力だけが正義だ。」と言っていたことを思うと…。
おそらく不破は優秀ゆえにつまらない人生・妬みや嫉みによるイジメ・学校内のヒエラルキー・力や知力より金や権力が優先される現代に、嫌気がさしていたのでしょう。
だからタイムトラベルのことを知って、すぐに荷物・武器を持って雷が落ちる時間を調べて霊石に飛びんだのではないかなと思います。
武器の十文字槍はできるだけ間合いが取れて、かつ当時使用されていた薙刀よりも優秀な武器を調べてネット通販などで購入し、あとから刃を研いだのではないかな。
ラストの方では「お前たちの帰る先はただの闇だ」「このくだらない世界を誰かが壊せと言っている」「生きてるって実感が湧くだろう」と言っていたことを思うと…。
一応戦国時代のてっぺんを目指してはいるものの、何かを成し遂げたいというよりかは自分自身が面白おかしく生きること・全てを壊すことが目的だったのでしょう。
未来を知っているからこそ誰よりも効率よく動いて、つまらない現代に繋がる全てをぶち壊せる…生きがいのある人生を求めていたのではないかな。
現代では得られないものを得るため、面白おかしく生きたい・運命に抗いたい・全てを壊したいと、不破は戦国時代に行ったのではないかなと思います。
タブレットが使えている理由
電波がないのでスマホ・タブレットによるネット通信は使えないけど、バッテリーさえあれば時計代わり・オフライン閲覧などは可能だったのだと思います。
タブレットで閲覧していた『戦国百科』は生徒が以前閲覧・ダウンロードしていたもので、ネット通信なしで見られたのでしょう。
だからバッテリーさえ残っていれば、もしくはモバイルバッテリーさえあればドローン・トランシーバー・タブレットなどは使用可能だったのだと思います。
電気・水道・ガスに関しては、タイムスリップした時点で使えなくなっているでしょう。
ただ科学部が武器を作っている時にはんだごてのようなものを使用していたことを思うと、大きな学校なだけに予備電源などがあった可能性はありそうですね。
ラストの学校シーンの意味
ラストで生徒が普通に学校に通っていたことを思うと、不破が倒されたことで生徒たちが戦国時代にタイムスリップした事実が失くなっていたのではないかなと思います。
突然の生徒大量失踪・失くなった生徒&教師の数・血まみれの校内・傷だらけの生徒たちがそのままなのであれば、遥在学中の学校再開はムリでしょう。
遥がラストで松葉杖をついていたことを思うと、何年も経っているわけではないでしょうから…マスコミ・PTAが騒ぐし、生徒のメンタル的に難しいと思います。
タイムスリップのことを黙っておいて通り魔・不審者がやったと説明したとしても、亡くなった数が数だけに犯人不明のまま同じ校舎で学校再開はムリでしょう。
なので個人的にはタイムスリップしていたという事実自体がなくなっている、過去が変わったことで現代も変更されていたのではないかなと思います。
タイムスリップについて
個人的には今作のタイムスリップには、平行世界・パラレルワールドも関わってきてしまっていたのではないかなと思います。
そもそも蒼たちが戦国時代にタイムスリップしたのは、不破がタイムスリップして歴史を変えようとしたため…というか実際に変えていたのではないかな。
不破がタイムスリップして過去&現在が改変したために蒼たちがいた世界とは違ったパラレルワールドが生成され、蒼たちのいた世界が消滅しかけていたのでしょう。
なんというかパラレルワールドの中の主流が入れ替わってしまって、過去が変わったことで蒼たちの世界がありえない世界線として消滅しかかっていたのだと思います。
そして世界消滅による歪みと雷が重なって今まで以上に霊石の力が膨れ上がり、人だけでなく学校ごとタイムスリップしたのではないかな。
そして戦国時代にタイムスリップして不破を倒したことで、彼が過去を改変したために発生したパラレルワールドは消滅。
ただ家康が倒れて蒼が戦国時代に残ったことで、蒼が家康の代わりにつくった元の世界によく似たパラレルワールドが新しく発生したのではないかな。
なので元いた世界線は結局消滅し、遥たちが戦国時代からタイムスリップして戻った現代は元の世界ではなく、その新しいパラレルワールドだったのだと思います。
生き残り&死んだ人たちのその後
戦国時代から戻った世界がパラレルワールドだと考えると、タイムスリップしたこと自体がなかったことになっているから斬られた人たちも全員無傷&無事だと思います。
遥たちが戦国時代から戻った現代は元の世界ではなく、蒼が家康の意思を継いで作り上げた元の世界に限りなく近いパラレルワールド。
だから学校が戦国時代にタイムスリップしたのは別世界での出来事であって、この世界ではそんなこと起きていないし野武士たちに斬られてもいないのだと思います。
だから今まで斬られた生徒や教師たちは何事もなかったように、ただただいつもと変わらない平凡な日常を送っていただけでしょう。
生き残った生徒たちに関しても戦国時代からタイムスリップして戻った来た時に、パラレルワールドにいた同一人物とかち合って統合されたのではないかなと思います。
タイムスリップした事実がなくなっている世界だから、タイムスリップで受けた傷も全て消えて…それに伴って記憶も消えているのではないかな。
おそらくは現代に戻ってきたときは中庭に集まって「あれ?俺たち何していたんだ?」「なんでこんなとこにいるんだ?」って感じになっていたのではないかなと思います。
ラストシーンで遥の周りの机に荷物が置かれていたことを思うと、みんな普通に通学しているようなので…あの惨劇の記憶が残っているとは考えにくいです。
いくら無事に帰れたとは言え、友達が数多く目の前で倒れたり野武士に襲われたことはトラウマになるはずだから…記憶があったらもう少し空席があるはず。
そこが大丈夫だとしても傷だらけで帰ってきた生徒たちが何人もいたら問題になって、あんな風にいつもどおりに登校するのはムリでしょう。
だから全員が通学していたことを思うと斬られていた人たちは全員無事だし、生き残りたちも傷と一緒に記憶が消えて平和に暮らしているのではないかなと思います。
不破・蒼・遥のその後
不破と蒼は失踪人扱いになり、パラレルワールドの分岐点に関わった遥だけは傷も記憶も保持して現代に戻ってきていたのではないかなと思います。
戦国時代からパラレルワールドに来たけど、不破と蒼がタイムスリップした時点でパラレルワールドが発生しているので2人はそのままでしょう。
遥は不破が倒された場面・蒼が戦国時代に残った場面に居合わせているし、蒼が戦国時代に残る言葉というかきっかけも与えているから…。
なんというか不破・蒼・遥だけはパラレルワールド生成に関わった人物、この世界が生まれるきっかけの人間として記憶や傷がそのままなんじゃないかなと思います。
個人的にパラレルワールドを自覚できるのは、パラレルワールドを生んだ人だけという印象があるので…。
他の人は巻き込まれた人だけど、彼らに関しては当事者だから…彼らだけはタイムスリップした事実も記憶も残っているのではないかなと思います。
映画『ブレイブ -群青戦記-』の関連作品
映画版とは結構違うので、別作品として楽しむのがおすすめ。ちょいグロめ。
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まとめ
最初から最後まで楽しめる映画で、面白かったです。
ただ映画を観た後に原作を読んでみたらあまりの設定・展開・キャラの違いにかなり驚いたので、原作好きな方だとちょっと違うなとなるかもしれませんね。
どちらかといえばちょっと残酷な青年マンガ系映画がお好きな方、原作に興味が湧くような実写化映画がお好きな方におすすめな映画でした。