謎めいた場所からの脱出を目指す人々を描いた映画『CUBE 一度入ったら、最後』。
シンプルで不可解な世界・不可思議なキャラクター性が印象的な映画で、視聴後の考察は面白かったけど…映画自体はちょっと謎めきすぎていたかなと思います。
どちらかといえば謎めいた映画を自分なりの解釈で楽しむ考察好きな方、キャラクターが多い映画が苦手な方におすすめ!
映画『CUBE 一度入ったら、最後』の作品情報
あらすじ
突如、謎めいたキューブ状の部屋で目覚めた男性/後藤祐一。
同じ部屋にいた物腰柔らかな男性/越智真司、無口な少年/宇野千陽にもここがどこななのか、なぜいるのか何も分からない様子でした。
そんな時、靴を投げ入れて何かを警戒しながら移動してきた男性/井手寛、落ち着いた様子で何者か尋ねてくる女性/甲斐麻子と出会います。
そして腹を真四角に切り取られた遺体とも…。
どうやらキューブ状の部屋は上下左右にいくつも続いていて、中にはトラップが仕掛けられている部屋、開かない出入り口があることが分かりました。
後藤たちはパニック状態になりながらも、強引な井手と冷静な甲斐につられるように自己紹介と何も分からないという状況確認を済ませ、次々に部屋を移動していきます。
井手の闇雲な移動についていくだけの後藤たちでしたが、部屋と部屋をつなぐ出入り口に、それぞれ違った数字が書かれていることに気付きました。
不思議に思いながらも移動を続けると、会社役員だというよくしゃべる男性/安東和正と出会います。
けれど人数が増えても状況は変わらず、終わりの見えない移動に疲れ、出会ったばかりの人間同士に険悪なムードが流れていました。
そんな時、千陽が数字を見つめ、何かに気付いたようですが…。
予告動画
動画リンク
映画『CUBE 一度入ったら、最後』の感想
【面白ポイント】
- シンプルで不可解な世界
- 不可思議なキャラクター性
- 謎めいたままの結末
シンプルで不可解な世界
何もない真四角なシンプルな部屋で目覚め、どこを目指せばよいのか・誰がこんなことをしたのかすら分からないという不可解な世界観が印象的でした。
こういった映画の場合、サバイバルだったりデスゲームな場合が多いイメージが強かったので、そういったものがなかったのがすごく意外でしたね。
原作というか、リメイク前の映画は観ていないので違いなどは分かりかねますが…かなり謎めいたスタートでした。
ただシンプルな空間に何も分からない状態で放置されるというのも、新鮮味があって良かったかなと思います。
ただ色々と思うところがあるし、惹き込まれるほどの魅力があるかと言われると…個人的には、そんなに好みのスタートではなかったかな。
不可思議なキャラクター性
キャラクターもそこまで人数がいないし、尖った特徴もなくて…シンプルで良いのだけど、個人的にはすごく不可思議なキャラクター性に感じました。
個人的にたくさんのキャラクターが登場する映画が苦手なので、登場キャラが少ないのは良かったです。
あと卑屈なようで我が強いキャラとか、高圧的だけど意外と優しいみたいなキャラが、すごく今っぽく感じました。
キャストも豪華で、だからってご都合主義に生き残らせることもなくどんどん消えていって…良かったかなと思います。
ただキャラの言動には違和感というか…なんでそうなるのか、共感できないものがありましたね。
越智の発狂・井手さんの脱落・安東の悟りも、何というか自分の中で腑に落ちないというか…うまく言葉にできないのですが、違和感がありました。
おそらくですが、キャラクターの背景がセリフでざっと説明されるだけだったから、思い入れがないせいかな…と観終わった今となっては思っています。
せっかくキャラ数が少ないので、もう少し背景についての深堀りがあった方が感情移入しやすくて、個人的には好きだったかな。
謎めいたままの結末
ネタバラシはせずに良い話でまとめつつ、ループが始まるという…何とも古き良きというか、好みの分かれそうな結末でしたね。
私はキライではないですが…千陽くんが「僕が変わらなきゃ」と言ったときには、良い話でまとめようとしているなと、声を出して笑ってしまいました。
甲斐が黒幕であること、ループするであろうことは何となく予想がついていたので、意外性もそこまでなく、ただただ謎だけが取り残されていたように感じましたね。
面白かったか?と問われると…答えは否かな。
B級映画としても普通の映画としてもちょっとパンチが弱かったし、グロさもそこまで感じず…満足感が薄かったように思います。
ただ視聴後の考察は、めちゃくちゃ楽しかったです。
ここはこうだったんじゃないか・あれはこういうことだったんじゃないかと、自分勝手に考察できる余地が大いに残されていたので、考察するのは楽しかったですね。
視聴中はずっと不思議だったことも、考察をすることで自分なりに納得することができるし…考察好きなのであれば、楽しむ余地はあったと思います。
ただ映画内でちゃんとスッキリすべてが解消・解決されている映画をお求めの方には、不向きな映画だったかな。
映画『CUBE 一度入ったら、最後』の考察
【考察ポイント】
- CUBEの正体
- 謎の女性/甲斐麻子の正体
- ラストの後藤祐一が生きていた理由
- ラストで脱出した宇野千陽のその後
CUBEの正体
たくさんの立方体状の部屋が集まってできた空間/CUBEは、情報収集のためプログラムによって精神世界につくられた仮想空間だったのではないかなと思います。
あんなにも大きな装置・施設を現実世界につくるのは難しそうですし、後藤だけしか知らないはずの過去の記憶が映し出されたのも現実味がありませんでした。
そして誰もあの空間に連れてこられた記憶がないというのも、現実世界なのであれば違和感が…。
なのであの世界は現実世界で眠っている参加者たちが、精神世界・夢で見ているような仮想空間だったのではないかなと思います。
参加者がCUBEにいた理由
参加者がCUBEにいたのは、おそらくCUBE側の人間が「最悪な人生を変えたくないか?」と彼らを勧誘したからではないかなと思います。
参加者たちは皆、それぞれに事情やトラウマがあって自分がキライ・他者がキライというタイプの人間でした。
それを町中にある監視カメラやスマホ・PCをハッキングして、CUBE側の人間は彼らの事情を知っていたのではないかな。
だから「最悪な人生を変えたくありませんか?」とでも言って、彼らのことをCUBEに誘ったのではないかなと思います。
現実世界に希望を見出だせない彼らには、怪しいなと思いながらも…少しでも希望があるのならばと、手を伸ばさずにはいられなかったのではないかな。
そして本拠地とも言える施設に彼らを招き、眠らせ、その間に脳・精神に干渉してCUBEの世界をまるで現実世界のように体験させていたのではないかなと思います。
ただし精神世界といっても、CUBE内で落命したら現実世界でも落命していたでしょう。
つまり記憶こそないものの、参加者たちは人生を変えたいと思っていたからこそCUBE側の誘いに乗って、あの世界にいたのではないかなと思います。
CUBEの目的
CUBEの目的は人間が突然の驚異・恐怖・不思議な状況に置かれた時、どんな行動を取るかサンプリングするためだったのではないかなと思います。
そもそもCUBEは、政府のためにつくられた秘密組織・機関だったのではないかな。
だから人間が災害・犯罪・異変に巻き込まれた時にどう反応するのか情報収集するとともに、人間の感情を理解したAI製作のためのサンプリングがほしかったのでしょう。
窮地に陥った人間はどういった行動を取るのか把握することで、いざ現実世界で問題が発生した時にもより良い対策が取りやすくなるでしょうからね。
そしてAIをつくるにあたって、優秀な人間の情報ばかり詰め込んでも完璧とは言えないので、あえて不出来な人間を集めていたのではないかな。
そうすることで介護・病院・保育など、様々な場所で活躍できる、人間よりも人間らしいAIをつくろうとしていたのではないかなと思います。
けれど施設の維持費・AI製作には膨大な資金が必要なため、CUBEの世界は出資者へのサービスとして見世物にもなっていたのではないかな。
次々に命を落としていく人間・本性丸出しの言動・残酷なショーを見たがる人間は、一定数いるでしょうからね。
CUBEをショーにして資金を集めつつ、驚異に晒された人間の言動をサンプリングすることで、災害や犯罪対策・AI製作に役立てようとしていたのではないかなと思います。
参加者の記憶がない理由
目的・報酬があると知っていると、CUBE側が欲しがっている人間らしい行動が見られないため、CUBEに入れる前に記憶を操作して消していたのではないかなと思います。
CUBE側が目的のために欲しているのは、素の人間らしい言動。
前もって同意を得ていたり、安全が保証されていると思っていてはそれが見られないため、参加者の同意を得た上で記憶を消していたのではないかなと思います。
素数とトラップ
素数が含まれた部屋は後藤が考えていた通り、トラップがあるというルールだったのだと思います。
ただ参加者の強い感情変動が見られた場合は、よりよい研究成果のためにあえてトラップを作動させたり発動を遅らせたりしていたのではないかな。
脱出の邪魔をする意図はなく、参加者…今回の場合は特に越智の感情変動をより理解するために、トラップを操作していたのだと思います。
CUBEという世界のルールよりも、研究成果の方が優先された結果でしょう。
その越智も、用済みになったらトラップであっさり亡き者にしていましたけどね。
なので基本的には素数を含む部屋にはトラップがあるけど、参加者の強い感情変動がある場合は、よりより研究成果のためにトラップを操作していたのだと思います。
謎の女性/甲斐麻子の正体
甲斐麻子はCUBEという仮想世界につくられた管理人であり、参加者の情報を収集して成長するAIだったのではないかなと思います。
簡単に言ってしまうと、CUBE側が用意したバーチャルな刺客。
甲斐はどこか人間味がないというか、どんな状況下でも冷静でしたし…越智が暴走しているときも隣の部屋にいたのに何も言わなかったのは、つまりそういうことでしょう。
最初にそれぞれの名前を聞いていたり、何者か問うていたのもサンプリングのため…一人一人の顔をゆっくり見ていたのも、記録のためだったと思います。
そうして参加者と行動を共にすることで、近くで言動を観察して、少しずつ人間らしさを吸収・学習していたのでしょう。
だからラストで後藤を失って泣きわめく千陽を抱きしめていたのも、CUBEを出ていく千陽を笑顔で見送ったのも後藤たちを観察した結果だったのだと思います。
彼女の目的はあくまでも様々な人間を観察してサンプルを集める・学習するためなので、CUBEから脱出する人間の邪魔をすることも協力することもなかったようです。
けれど参加者の感情変動が起きた時は、適宜トラップには干渉していたと思いますけどね。
サンプリングは公平を期すため、学習したサンプルはどんどんプログラムに蓄積しつつも彼女自身はフラットな状態に戻っていたように感じました。
そうしてCUBEの管理人・身近な観察者・AIとして人間の言動を学習しつつ、少しずつ人間らしくなるために何度も同じことを繰り返していたのではないかなと思います。
ラストの後藤祐一が生きていた理由
トラップでズタボロになった後藤が生きていたのは、CUBEが仮想世界・参加者が精神体だから、心が折れない限りは何度でも立ち上がれたためだと思います。
CUBEでの落命は現実世界の落命とイコールですが、おそらくは落命の判定が現実世界とは異なるのでしょう。
あの世界では怪我の程度・出血量・損傷箇所などは関係なく、命が終わったと諦めた瞬間に終わりを迎えるのだと思います。
落命を自覚した瞬間に、それが現実のものになるというイメージですかね。
だから越智・井手・安東は現実世界でも命を落としていると思いますが、後藤は諦めない意思があったからこそ立ち上がったのではないかな。
現実世界では致命傷でも、精神世界だと心が折れない限りは何度でも立ち上がれるから、ラストの後藤は生きていたのではないかなと思います。
そしてCUBE側もそんな後藤の存在を面白いと感じたから、リトライを認めたのではないかな。
ラストで脱出した宇野千陽のその後
一人だけ生き残った千陽は現実世界で眠りから覚め、周りの変化を望むのではなく、自分から新しい人生を歩むために動き始めるのではないかなと思います。
甲斐が「外に出ても前と何も変わらないかもしれない」と言っていたことを思うと、CUBEから脱出したところで特別な報酬は何も得られないのでしょう。
けれど千陽は後藤からもらったボタンを見つめ、何も変わらないからこそ「僕が変わらないと」と決意したのではないかなと思います。
「バイバイ」と微笑んでCUBEに残る甲斐に何も言わず、うなずいて出口に向かっていたことを思うと、甲斐がCUBE側の存在であることはあの時に分かったでしょう。
けれど彼女から悪意は感じられないからこそ、騒ぐこともなく無言で去っていったのではないかな。
そして出口にたどり着いた千陽は、CUBEに入った時と同じ現実世界の施設で目覚めたと思います。
けれどCUBEに入る前の彼と、CUBEから脱出した後の彼はもう違う人間になっていたことでしょう。
もう虐待・イジメなどによって暴力を受けるだけだった彼ではなく、児童相談所・警察に相談するなりして、今の状況から脱却しようと努力するのではないかなと思います。
最悪の人生を変えるために、新しい選択肢を自分の意思で選ぶのではないかな。
映画『CUBE 一度入ったら、最後』の関連作品
高評価の映画なので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
主人公が違うので、新しいCUBEの世界を楽しめる作品になっています。
まとめ
最初は色んな意味で不安しかない映画でしたが…キャラクター数が少なくて観やすさはあるし、謎が多く残されている分、視聴後の考察は楽しかったですね。
結末まで見てもネタバラシがほとんどされていない映画なので、自分なりの解釈で楽しむことができるのは魅力でもあったかなと思います。
なのでどちらかといえば謎めいた映画を自分なりの解釈で楽しむ考察好きな方、キャラクターが多い映画が苦手な方におすすめな映画でした。