怪獣が倒れたその後を描いた映画『大怪獣のあとしまつ』。
かなり独特な笑いとセリフ回しの多い映画で、オチこそ笑えたものの主人公格のキャラクターが多いこともあってか、個人的に好みではありませんでしたね。
どちらかといえば主人公格のキャラクターが多く登場する映画がお好きな方、オチに笑える残念なB級映画がお好きな方におすすめ!
映画『大怪獣のあとしまつ』の作品情報
あらすじ
通常兵器を受け付けない怪獣と呼ばれる巨大生物が、空から降ってきた強烈な光によって倒れてから10日後の世界。
首都は破壊され、怪獣のことも光のことも不明なことばかり…怪獣の遺体から有害な病原菌や放射線が発見されることも考慮して、安心できない日々が続きます。
環境大臣秘書官として働く女性/雨音ユキノ、首相秘書官として働く夫/雨音正彦も、怪獣の影響があって忙しく動き回っていました。
怪獣退治に特化した首相直轄の独立機関『特務隊』に所属する、ユキノの元彼/帯刀アラタにも急な呼び出しがかかります。
今の日本にとって1番の問題は、川に倒れた怪獣の後始末。
どの省が処分するのかどう処理するのか、はたまた人類の遺産として保存するのか…各省の大臣や首相は、お互いに押し付けあって結論が出ずにいました。
最終的に、怪獣が倒れた後はすっかり存在意義を失ってお荷物扱いだった特務隊にお役目が回ってくることになり、アラタがその担当に。
しかし政治的出世を目論んでいる環境大臣が怪獣を間近に見ようと現場に突撃し、秘書官として同行したユキノと現場担当のアラタは再会しました。
川に横たわる怪獣には強烈な光によるものと思われる大きなキズがあり、遺体の周りにはカラスが群がります。
さらに遺体には腐敗によるものと思われる隆起も現れ始めており、割ると体液と共に激臭を放ちはじめ…。
予告動画
動画リンク
映画『大怪獣のあとしまつ』の感想
【面白ポイント】
- 独特なセリフと笑い
- 主人公格が多い
- 笑えるオチ
独特なセリフと笑い
今作は言葉回しと言うかセリフがかなり独特で、笑いの取り方が人を選ぶ映画だったかなと思います。
怪獣の名前・臭いの話もそうですし、真面目なシーンでぶちこまれるおふざけセリフ・下ネタ・下品さ・映像が全体的に独特でしたね。
なんというか「あははっ!」と面白くて笑うと言うよりも、シーン…っと場が静まり返って思わず笑ってしまうようなタイプの笑いで、かなり好みは分かれそうでした。
印象としてはドラマ『時効警察』とか『TRICK』とかに似ていたかな。
ただ、SE・セリフに合わせた動き・ギャグに対する返しがあまりないせいか、これらのドラマほど笑えなくなっていたかなと思うフシがありました。
何というか嫌いじゃないけどどこか物足りなくて…そのせいで場が冷えるタイプの笑いが、完全に寒いだけのギャグになっている感じがあって少し残念でしたね。
あと真面目にしたいのか、ギャグに振りたいのか…少し分かりにくかったです。
もっとギャグに振るなら全力でギャグに振り切っていたら…あとはドラマの時に好きだったギャグに対するリアクションがもっとあれば、好みだったかなと思います。
主人公格が多い
今作は首相・アラタ・ユキノ・雨音・ブルースと、主人公格のキャラクターが多いのも印象的でしたね。
みんながみんな主人公のように個性が強くて、背景があって・心情があって・ダメなところがあって…何というか濃かったです。
それぞれの主人公格に結構焦点が移り変わるというか、ストーリーに合わせて主人公が場面場面で変わるような映画だったので、飽きやすい人には良いのかもしれませんね。
あと美味しいところだけほしい人間・権威を求める人間・不倫する最低人間・他人を巻き込む突撃人間と…カッコよくないキャラが多いのも印象的でした。
普段はかっこ悪いけどいざというときはカッコ良いとかじゃなく、純粋にみんながみんな自分勝手で正義感もなく、信用できないタイプの人間だったかな。
ダメなところがあるキャラクターが好きな人には良かったのかもしれませんけど、『ダメダメだけどカッコ良い』が好きな者としてはちょっと共感しにくかったです。
ブルースの兄貴だけは最初から最後までちゃんとカッコよくて、主人公ムーブしてましたけどね。
個人的に主人公格が多い・濃いキャラが多すぎる映画は好みではないので、今作の場合も主人公&話があっちこっちに飛んでついていけない節がありました。
もうちょっと誰か1人にスポットを強く当てて、主人公1人を中心にストーリー展開してくれたら好きだったかもなぁと思う映画でしたね。
笑えるオチ
今までのは何だったんだと思わせる、すべてを無に帰す笑えるオチには大爆笑でしたね。
なんで最初から変身しなかった?
なぜ変身できる?
キノコはどうなるの?
怪獣の正体は?
色々と思うところはあるけど、唐突な締め方には面白い・面白くないとかじゃなくて、もはや笑うしかなかったです。
ただ、もし映画館でこれを観たら「うわぁ…」ってなったかもなとは思いました。
私は元から「低評価の多い映画だなぁ」と知っていた状態で観たので問題なかったですが、期待して観ていてこの終わり方だったら、かなりしょんぼりしたでしょうね。
かなり残念なB級映画だったと思います。
ただもうちょっとここがこうだったら、あそこが違っていたらと思うフシがあるので、全体的にズレていると言うか惜しくて…B級とも言い切れない感じがありましたね。
何というか全体的には映画『シン・ゴジラ』、ラストの締め方は『貞子vs伽椰子』って感じで、私の好みではない作品を合体させた感がすごく強かったです。
ラストこそ笑えたものの、全体的に好みではなかったかなと思います。
映画『大怪獣のあとしまつ』の考察
【考察ポイント】
- 怪獣/希望の正体
- ラストの意味
- キノコのその後
- 選ばれし者/帯刀アラタの正体
- デウス・エクス・マキナの正体
怪獣/希望の正体
怪獣は宇宙人が地球に落としてしまったペット、もしくは地球の古代生物である恐竜を蘇生・クローン生成して研究していた生物が逃げ出していたのだと思います。
おそらく地球人にはバレないようにしつつも、研究のために宇宙船が地球のそばに停留していたのでしょう。
なので怪獣が地球にやってきたけど宇宙人側に攻撃する意図はなく、3年前にたまたま怪獣が地球に落ちてしまった・逃げ出してしまっただけだと思います。
そして最初は小型だったために宇宙人は逃げ出した怪獣を探し出すことができず、やっと見つけた頃には3年かけて巨大化していて回収できなくなっていたのではないかな。
怪獣が川で倒れていたことを思うと水中で生きれる性質を持っていて、もしかしたら今までは海底に隠れ住んでいたのかもしれませんね。
怪獣が地球に行ったことに気がついた宇宙人は、アラタに特別な力を付与して怪獣を止めてもらった後、宇宙船まで運んでもらうことにしたのでしょう。
わざわざ怪獣を回収したのは、宇宙人には蘇生をする術があるからか…もしくは怪獣に愛情があるからか、遺体も研究材料になるからだと思います。
ラストの意味
ラストでアラタがスマホを掲げて変身したり、ユキノがご武運をとか言っていたのは自分に酔いしれていたからではないかなと思います。
アラタがスマホを掲げて決めポーズをしていたのは特に意味はなく、ただ単にヒーローに憧れてカッコつけで決めポーズしていただけでしょう。
デウス・エクス・マキナと呟いていたのも、エゴサしていた時にネットで知った光の巨人に対する名称を気に入ったからだと思います。
巨大な怪獣から落下しても無事だったのは、特殊能力の中に超回復があったからではないかな。
ブルースに殴られた時に鼻血が出たのに一筋だけですぐ止まったのも、超回復の影響があったからでしょう。
雨音がアラタの正体を疑っていたのは怪獣が現れた時に光と共に消え、その後すぐにデウス・エクス・マキナが現れたから。
それ以前に3年前に消え、2年間も行方不明だったのにひょっこり現れたことも何かあると疑っていたのでしょう。
タイミングが良すぎたためにあいつが何かしたのだろうと、研究者に光についての調査を依頼しながらずっと関与を疑っていたのだと思います。
怪獣の遺体処理に関してもアラタが鍵を握っていると勘ぐっていたために、アラタが怪獣の上にいても構わずにミサイルを発射したのでしょう。
アラタが打ち明けていればもっと協力・効率良く処理できただろうに、最後まで言わずにいたのは、神から与えられし使命…とでも己に酔いしれていただけではないかな。
だからラストのアラタ・ユキノの言動はすべて自分に酔いしれ、地球を救う俺…ヒーローに愛されし私…にうっとりしていただけではないかなと思います。
キノコのその後
今の所、怪獣に近づこうとするYoutuber・環境大臣・アラタがキノコに感染しているけど、あれについても宇宙人は何がしかの対策をするのではないかなと思います。
例えばキノコに感染しているアラタからキノコを排除して帰すことで排除方法を伝えるとか、キノコに感染した人を秘密裏に宇宙船に連れてきてキノコを排除するとか。
大怪獣を倒すのに宇宙人がアラタを経由して協力したのであれば、怪獣の影響でバラ撒かれたキノコについても何がしかの対策はすると思います。
もちろん大々的に協力することはしないけど、なんとかしようと動くのではないかな。
もしくはYoutuberは全身キノコ塗れなのに、同じように体液を浴びたアラタと後輩たちはなかなか感染しなかったことを思うと…感染力に個人差がある可能性もあります。
そこから地球人だけでも研究・対処する可能性もあるので、そういった場合には宇宙人も放置するかもしれませんね。
ただ怪獣の影響でバラ撒かれてしまったことを思うと、宇宙人がキノコをこのまま放置・大繁殖させてしまうということはしないと思います。
選ばれし者/帯刀アラタの正体
アラタは元から宇宙人・ヒーローとかではなく、地球よりも発達した星からやってきた宇宙人に力を付与された地球人だったのではないかなと思います。
映画内だと動物・土地・怪獣にはキノコは生えず、地球人にだけ生えていたことを思うと、キノコの生えていたアラタも一応は地球人でしょう。
ただ後天的に巨人化・飛行・光エネルギーなどを可能にする、特別な力を得ていただけではないかな。
アラタが初めて力を手にしたのは3年前、2年かけて肉体に手を入れて特殊な力を与えられていたために行方不明だったのではないかなと思います。
アラタに力を与えた宇宙人
アラタに力を与えた宇宙人は、おそらく怪獣出現に関与しているけど直接手を出すわけにはいかず、手近にいたアラタに力を与えて倒してもらったのだと思います。
宇宙人が直接手を出さなかったのは、空気の汚れた地球に降りたくない&身体に害がある・地球人に騒がれると面倒・宇宙旅行者の法律関係とかかな。
かといって怪獣を見つけることができないし、致し方なく3年前にアラタを宇宙船まで吸い上げて、2年の月日をかけて肉体をイジって特別な力を与えたのだと思います。
怪獣が巨大化した時にアラタが怪獣を倒せるように、怪獣が成長・巨大化して動き出す時にアラタに回収させることができるようにしていたのではないかな。
アラタが選ばれたのはたまたま…「お前だから託した」みたいなものはないと思います。
アラタの持っていたスマホ
アラタがラストで持っていたスマホは宇宙人がアラタに持たせていた、特殊なタイマーが表示されるものだったのではないかなと思います。
アラタを宇宙船に引き寄せた際に持ち物検査して似たものを復元したか、もしくはアラタのスマホに特殊タイマーを設定したものだったのではないかな。
タイマー設定はおそらく怪獣を回収する日時を知らせるため、巨人に変身するタイミングを知らせるために設定していたのだと思います。
おそらくはタイマーと一緒に「巨人化して怪獣を宇宙へ」みたいなメッセージがタイマーと一緒に設定されていたのでしょう。
10日以上経ってから怪獣を回収したのはすぐに回収する用意が整わないから、初回時にアラタにそこまでさせるエネルギーを与えることができなかったからだと思います。
アラタが巨人化できるのは上空から地表へ、地表から上空への移動が精一杯なために倒して宇宙船まで来させる・往復させることができなかったのでしょう。
アラタが変身しなかった理由
アラタがもっと早くに変身しなかったのは、そもそも変身する方法が分からなかったからだと思います。
アラタが怪獣の現れた時に光の巨人に変身し、その影響でユキノ・雨音の身が危険にさらされたことを思うと…変身のタイミングを自分で決められないのではないかな。
だからスマホのタイマーの時間になるまで変身できなかったし、怪獣による悪影響が出ないように応急処置ばかりしていたのでしょう。
変身は時限式なのか、宇宙人がアラタに対して遠隔操作しているのかは定かではないけど…自分ではコントロールできないのではないかな。
つまりアラタは宇宙人に力を付与された地球人だけど、変身する方法も分からなかったために、ずっと変身せずに人間として怪獣対策していたのではないかなと思います。
デウス・エクス・マキナの正体
デウス・エクス・マキナとは巨大化し強烈な光エネルギーを発しているアラタのことで、名付けたのはネット民だと思います。
そもそもデウス・エクス・マキナとは「機械仕掛けの神」という意味の演劇・文芸用語で、「機械仕掛けから出てくる神」という意味のラテン語らしいです。
「解決困難な事態を突如現れて解決、物語を終わらせてしまう存在」と首相は言い、雨音は「選ばれし者」と言っていました。
おそらく命名した人は現実味がないというか、どこか出来すぎた舞台を観ているようだと思ってこの演劇用語をつけたのではないかな。
あとは神に姿形はなく、強烈な発光体・エネルギー体と考える人もいるから…そういった意見を色々複合した結果、名付けられたのでしょう。
演劇のような存在・強烈な光・急激な終わりからネット民が命名して、それを見かけた首相やアラタがあの光のことをそう呼んでいたのではないかなと思います。
強烈な光エネルギーを発していてるのは通常武器を通さない怪獣を貫通する力を得るため、あとは宇宙人の関与を地球人に悟られないためだったのではないかな。
映画『大怪獣のあとしまつ』の関連作品
読みやすく、より状況が詳しく分かるので映画の補足として読むのもおすすめ。
映画に近い印象がありつつも、より詳細が知れるので補足としておすすめです。
ミステリー×コメディーの組み合わせがお好きな方に。ちゃんと面白いですよ。
まとめ
笑い・キャラ・ストーリー共になんか惜しい感じがあって…あまり好みではない映画でしたね。
オチには爆笑しましたが、全体的に笑いが独特だし主人公格のキャラが多すぎてゴチャつくしで…これを映画館で観ていたら、かなり落ち込んだと思います。
なのでどちらかといえば主人公格のキャラクターが多く登場する映画がお好きな方、オチに笑える残念なB級映画がお好きな方におすすめ!