娘のために戦う盲目老人を描いた映画『ドント・ブリーズ2』。
1とは主人公・キャラの立ち位置が変わっていることでかなり違ったテイストの映画になりつつも、狂気・切なさ・幸せがギュギュッとつまっていて面白かったです!
どちらかといえば敵だったキャラが味方になる展開がお好きな方、狂気と切なさが絶妙なバランスで組み込まれている映画がお好きな方におすすめ!
映画『ドント・ブリーズ2』の作品情報
あらすじ
火事で母親を亡くした少女・フェニックス。
住まいを移し、学習からサバイバル訓練まで指導する厳しい盲目の父『ノーマン・ノードストローム』と、いつも一緒の愛犬・シャドウと共に穏やかに暮らしていました。
そんなある日、めったに行くことができない燃え残った前の家に作った母親の祭壇にお参りをした帰り道…謎の男・レイランが声をかけてきます。
フェニックスは毅然とした態度であしらったものの…レイランはどうやら危険な男で、彼女のことを付け狙っている様子。
そんなこととは知る由もないフェニックスは「学校に行きたい」「友だちが欲しい」と、父親に厳しすぎる生活への不満と孤独を訴えました。
しかし父親は聞く耳を持たず…フェニックスが『孤児院』へ入りたいとすら考え始めていた時、彼女を狙う謎の侵入者が家に現れます。
父親が不在でも、1人で侵入者の目をかいくぐり出口を目指すフェニックスでしたが…。
予告動画
動画リンク
映画『ドント・ブリーズ2』の感想
【面白ポイント】
- 1と繋がりつつも違ったテイストに
- 少女を巡る母親と老人の狂気
- ラストは切ないハッピーエンド
1と繋がりつつも違ったテイストに
1では狂気に満ち溢れ、娘を取り戻そうと恐るべき凶行に走っていた盲目の老人が…今作では娘を守るために紛争する力強い父親に様変わりしていて驚きました。
まぁ元々娘想いなキャラではありましたが…2では娘を取り戻したことで、絶対に失いたくないという1以上の執念・力強さを感じましたね。
そして1では最恐の敵だった老人が2では娘にとって最強の味方になっていて、盲目の老人というキャラの印象が1とはかなり違いました。
個人的には敵が味方になる印象チェンジは大好きなので、今作で老人の印象とか立ち位置が変わっていたのは良かったなと思います。
印象としては映画『サイレントヒル』シリーズに似ていましたね。
サイレントヒルでも1で恐怖の象徴だった三角頭様が、2で味方になるという印象チェンジがあったので…キャラの印象がガラッと変わる感じがよく似ていたかなと思います。
個人的には盲目の老人は良い人間ではないと分かっていても、どこか嫌いになれない不憫さがあるキャラだったので…2で味方になっていたのは嬉しい変化でしたね。
1では色々あったけど…2では絶対の味方というか、ずっと娘の味方でいてくれる安心感のあるキャラで良かったです。
なのでどちらかといえば1で敵だったキャラが2で味方になる展開がお好きな方、善人ではないけど悪人とも言い切れないようなキャラがお好きな方におすすめな映画でした。
少女を巡る母親と老人の狂気
娘のことを命がけで取り戻そうとする盲目の老人の狂気と、生きながらえるために娘の心臓を奪おうとする母親の狂気は全くの正反対で、観ていて面白かったですね。
どっちの気持ちも分からないわけではないですが…やっぱり1の時から老人に共感していた分、今作の母親は最低に感じてしまいました。
どっちも最低な行為をしてきた過去があるのに、子供のために努力する親と子供を犠牲にする親だと、どうしても前者の方が善人に感じてしまいますね。
ただ母親の気持ちが全く分からないわけでもなかったです。
8年間も離れ離れで、すでに亡くなっていると思っていた子供の命と自分の命を天秤にかけたら…もしかしたら自分の命を優先させてしまうのかもしれないなとは思いました。
親子の絆って血縁関係だけじゃなくて、親子で過ごした時間・かけた愛情・かけられた愛情・思い出が大事だと個人的には思うから…。
だからこそ老人は血縁関係のない娘を命がけで助けようとしていたわけだし、フェニックスもラストでは父として愛情をかけてくれた老人の元に戻ったんでしょうしね。
何というかやっぱり老人の狂気の方が共感しやすいけども…母親の気持ちも分からなくはないというか、彼女の狂気もまた納得のいくものだったかなと思います。
ただ1の時の老人の狂気に比べるとイヤな気持ちになる人もいそうだなというか…好みが別れやすそうな狂気ではあったかもしれませんね。
なのでどちらかといえば最低だけど納得はできるような狂気がお好きな方、正反対な狂気のぶつかり合いがお好きな方におすすめな映画でした。
ラストは切ないハッピーエンド
ラストで娘を守りきった老人が亡くなってしまうのは切なさもあるけど、どこか穏やかさも感じられる結末で…すごく切ないハッピーエンドに感じましたね。
1では狂気バリバリで、娘を失ったのが悲しくて悲しくて…娘を奪ったやつが無罪になるのが悔しくて憎くて、神を恨むぐらいに暴走しまくっていました。
でもそんな老人が2では娘を得たことで、娘を失う恐怖とか孤独な生活に戻る不安は感じつつも…娘を愛し愛される生活を送って、狂気が癒やされたのだなと感じましたね。
娘だけじゃなくてシャドウからも愛し愛され、老人たちの家に度々出入りしていた元軍人の女性にもかなり気にかけてもらっていたみたいだし…。
何というか老人にとっては今までにない…娘を失う前の頃のような穏やかな生活が送れていたのではないかなと思います。
だからこそ狂気がどんどん小さくなって…ラストでは「自分のそばに寄るな」と娘を自分から遠ざけようとするまでになっていたのではないかな。
いやぁ…ドント・ブリーズ1〜2まで観て、老人の狂気の変化・生活の変化・心情の変化がすごい感じられてめちゃくちゃ良かったです。
1は1で良かったし、2は2で良かった…別々にも楽しめるのだけど、合わせて楽しむことでまた違った魅力が広がるようなシリーズ作品でめちゃくちゃ良かったですね。
1での出来事を思うと、老人がラストで命を落としたのは自業自得ではあったと思います。
でも娘に看取られて…幸せな最期だったんじゃないかなと思うと、切ないし悲しいけど老人にとってはハッピーエンドでもあったのかなと感じました。
娘もラストで老人からもらったフェニックスという名前を名乗っていたし…彼女にとっても幸せな生活だったのかなと思うと、グッと来るものがありました。
なのでサイコホラー系の映画でもハッピーエンドであって欲しいという方、切ないけど幸せな結末だと思えるような映画がお好きな方におすすめしたい映画でしたね。
映画『ドント・ブリーズ2』の考察
【考察ポイント】
- 敵のラウルが老人の味方をした理由
- エンドロール後の犬の意味
- レイラン家の火事の原因
敵のラウルが老人の味方をした理由
敵であるラウルが老人に娘の居場所を教えていたのは、彼も老人と一緒で良い人間ではないけど犬や子供には優しいタイプの人間だったからではないかなと思います。
ラウルは家から逃げるフェニックスを捕まえる時に、力づくではなく「落ち着け」と声がけしながら薬で寝かせていたし、家を燃やすときも犬の心配をしていたから…。
おそらくは子供好き・犬好きなタイプの悪人だったのだと思います。
盲目の老人と一緒で悪いことをやってきた悪人ではあるけど、誰にでも悪人なわけではないというか…傷付けたくない存在がいたのでしょう。
だからフェニックスが生きたまま心臓を抜かれる、あまつさえその心臓を母親が奪い取るなんてラウルの中では許せなかったのだと思います。
組織のため、自分たちが金を稼ぐためには母親の存在が必要だからと言われても心情的に許せなかったのでしょうね。
でも1人で歯向かったところでレイランは言うこと聞かないし、最悪の場合は裏切り者として処刑されてしまう可能性もあるから黙って従うしかなかったのではないかな。
しかし組織は老人の手で壊滅状態になったから…やっと自分の心のままに、許せないことを許せないと言えるようになったから、老人に助言していたのでしょう。
そしてそんな老人ならば、自分と違って真正面からレイランを止められるかもしれない・フェニックスを助けられるかもと感じていたのではないかな。
つまりラウルが老人に娘の居場所を教えていたのは子供好き・犬好きだから、幼いフェニックスに酷い目にあってほしくないと考えていたからではないかなと思います。
エンドロール後の犬の意味
助けた犬が倒れる老人に駆け寄って指をペロペロしていたエンドロール後の映像には、彼の狂気が終わったという意味が込められていたのではないかなと思います。
1のラストで、老人は確実に命を落としただろうと思われる状態からも執念で復活していました。
おそらくは娘を取り戻すまでは倒れるわけにはいかないという、常軌を逸した執念・狂気がなせる技だったのでしょう。
しかし2では倒れたまま、犬にペロペロと舐められても蘇ることはありませんでした。
何というかもう老人は1のときとは違って、娘を取り戻して幸せな人生を送ってきたからこそ…満足してあの世に旅立つことができたのではないかなと思います。
全てを知ってなお自分を助けたいと言ってくれる愛すべき娘に看取られて、助けたわんこに寄り添われて…孤独だった老人はやっと天に旅立つことができたのでしょう。
なのでエンドロール後の映像には彼が愛し愛される人生を送ったから狂気が終わり、天に召されることができたという意味が込められていたのではないかなと思います。
レイラン家の火事の原因
8年前にレイラン家で発生した火災はフェニックスの母・ジョセフィンが原因で起きたものであり、レイランは彼女をかばって逮捕されていたのではないかなと思います。
レイランの家は地下に薬をつくるキッチンがある密造所で、ジョセフィンがが薬をつくる製造者でした。
ニュースで「薬の密造所で火災」「レイランに余罪がある」と報じられていたことを思うと、家でレイラン主体で薬を作っていたことは警察の捜査でバレていたのでしょう。
ただジョセフィンの話は一切出ていなかったので…彼女が薬をつくっていることはバレていなかったのだと思います。
だからこそ警察はレイランが火事の原因だと断定し、逮捕したわけですが…レイランは「警察は俺のせいにした」と火事には関与していないような発言をしていました。
火災を起こした犯人
レイラン家の火事の原因がレイランにないのだとすると、火災を起こした犯人は火事の影響を誰よりも強く受けていたジョセフィンだったのではないかなと思います。
火事でフェニックスは記憶喪失になっていたものの逃げ出せていて、レイランは見る限り後遺症のようなものはありませんでした。
そんな中、ジョセフィンだけが化学物質から出た煙で血液が汚れ、心臓に悪影響を及ぼして先が長くないと言われるほどの重体。
そうなった原因は火災の発生源が地下の薬をつくっている製造所であり、火災のときにジョセフィンは動けない状態でそこにいたのではないかなと思います。
おそらくジョセフィンが地下で薬の試作品を満喫して気分が良くなっているときに、炙りに使用していた火が他の薬・葉っぱに引火して燃え広がってしまったのでしょう。
そしてジョセフィンの周囲に火はどんどん広がり、薬から発生する煙も増し…動けないままだった彼女は、身体に後遺症が残るまでになってしまったのだと思います。
ただ火傷等の身体的な後遺症がないことを思うと早い段階で近隣住民が通報し、彼女は消防隊員に救出されていたのかもしれませんね。
レイランが逮捕された理由
レイランが犯人であることを否定しているような言動をしつつも真犯人を言わずに大人しく逮捕されていたのは、大切なジョセフィンをかばうためだったのだと思います。
ジョセフィンはレイランにとって愛する妻というだけでなく、薬を作れる唯一の製造者ですから…失うわけにはいかなかったのでしょう。
自分が逮捕されてもジョセフィンの体調さえ戻れば薬を作り続け、部下たちの手で売りさばくことができる。
ジョセフィンの見た目にそこまでの外傷がなかったことで、大きな後遺症が残っているとは思わなかったのでしょう。
だからレイランは妻であり薬の製造者であるジョセフィンを守るために、身代わりになって逮捕されていたのだと思います。
映画『ドント・ブリーズ2』の関連作品
狂気・恐怖・イヤミス感ありな名作です。原作知らない方にもおすすめ。
1で恐怖の象徴だったキャラが味方になるステキ展開がお好きな方におすすめ。
今作よりも狂気に満ち溢れていて、個人的にかなり好きな映画です。
まとめ
1とのつながりを感じつつも、続編でありながら前作とは全く違ったテイストになっていて面白かったです!
2を観てから1を観てもインパクトが大きくて良いだろうし、1を観た方にはぜひとも2も観てみていただきたいような…シリーズ通して楽しめる映画になっています。
どちらかといえば敵だったキャラが味方になる展開がお好きな方、狂気×切なさの組み合わせがお好きな方におすすめな映画でした!