元ヒットマンの復讐劇を描いた映画『ジョン・ウィック』。
悲しいストーリーと泥臭いアクションが印象的な映画で、アクション映画でありながらわりと人間味が強いストーリーで少し驚きましたね。
どちらかといえば人間臭さを感じるような泥臭いアクションがお好きな方、ちょっとした矛盾を感じるくらい人間味に溢れるキャラがお好きな方におすすめ!
映画『ジョン・ウィック』の作品情報
あらすじ
愛する妻を失い悲しみにくれる男、ジョン・ウィック。
デイジーの首輪を付けた犬と共に妻が生前書いていた手紙が届いたことで、ジョンは犬との穏やかな生活をスタートさせることにしました。
しかし出かけた先でロシア系マフィアのボス・ヴィゴの息子であるヨセフに目をつけられたジョンは襲撃を受け、家を荒らされた上に愛犬の命と車を奪われてしまいます。
愛する妻からの最後の愛情と愛する車を奪われたジョンは怒りに震え、ヨセフの行方を追うようになりました。
そんなことは全く知らず、いつもどおりに過ごすヨセフ。
そんなヨセフに父であるヴィゴは怒り、ジョン・ウィックが昔の仲間であったこと、『ブギーマン』専門のヒットマン『ババヤガ』と呼ばれていたことを告げます。
そしてジョン・ウィックがいかに危険な人物なのかも…。
予告動画
動画リンク
映画『ジョン・ウィック』の感想
【面白ポイント】
- スタートが悲しい…
- 思ったよりも泥臭いアクション
- 新鮮味のあるアクション映画
スタートが悲しい…
大切な妻を失った数日後に思い出の家を荒らされ、彼女が生前手配してくれていた可愛い子犬と大切にしていた車を奪われて…もうスタートがめちゃくちゃ悲しかったです。
家には彼女が使っていた愛用品・思い出・一緒に過ごした空気感が残っていて、そこに1人残されるというだけでも個人的に心に来るものがある悲しみだったのに…。
そんな思い出の家に土足で他人が侵入して、さらに彼女が最後に残してくれた新しい家族が奪われて…もう悲しすぎて泣けましたね。
最初の段階ではジョンの昔のこととか何も知らなかったから…どうしてジョンばかりがそんな悲しい目に合うのかと、もうめちゃくちゃ悲しかったです。
印象としては映画『エスター』の冒頭に少し似ていましたね。
どうしようもない、突然の悲しみというはじまり方というか…キャラの背景に悲しみを感じるようなストーリー展開が似ていたかなと思います。
なのでどちらかといえばキャラの過去に悲しみを感じるような映画がお好きな方、悲しいストーリーから始まる映画がお好きな方におすすめな映画でしたね。
ただわんちゃんの命が奪われるシーンがあるので、そういったシーンが苦手な方は注意してください。
思ったよりも泥臭いアクション
『引退した元プロ』が主人公のアクション映画だと、スタイリッシュ・一方的な制圧が多い印象があるのですが…今作は思ったよりも泥臭い戦いが多かったですね。
ジョン・ウィックは恐ろしい功績を多く残しているヒットマンということでしたが、結構苦戦している場面が多かったですし…。
お坊ちゃまなヨセフが自宅に侵入したのも気付かず、ボコボコにされていましたから…少し腕が落ちすぎていると言うか、う~んと思う部分がありました。
個人的には映画『RED レッド』のイメージで観始めたのが良くなかったのかもしれませんね。
元プロは引退してもトレーニングを欠かさず、些細な出来事にも敏感という先入観を持って観てしまったので…イメージとは少し違いました。
ただ逆にその腕が落ちている感じが、妻との生活がそれほどまでに穏やかで素晴らしいものだったのかなと感じることができて良かったかなとも思っています。
引退したあとの生活がいかに裏社会から程遠く、穏やかで幸せに満ち溢れていたのかが泥臭いアクションから感じることができましたからね。
なのでどちらかといえばストーリーとの絡みを感じるようなアクションがお好きな方、泥臭いアクションがお好きな方におすすめな映画でした。
新鮮味のあるアクション映画
可哀想だけど自業自得な一面もあるキャラ、スッキリ爽快というよりかは泥臭さが強いアクションと…なんというかすごく新鮮なアクション映画でしたね。
最初はジョンに対してかなり同情的な気持ちがあったのですが、最終的には自業自得な部分もあるのでは?と思う感じがありました。
ジョンだってヒットマンとして他人の人生を終わらせてきたのですから、他人から幸せを奪われるのだって因果応報・自業自得と言えなくもないですし…。
バカ息子なヨセフだって自分勝手な行動ばかりしてきたのだから、復讐されても自業自得。
マフィアのボスであるヴィゴだって他人を脅して消して地位を築いてきたのだから、息子を奪われても…文句を言う立場にはないですよね。
何というかみんながみんな、自分の利益・愉悦・甘さを優先して行動した結果の自業自得ということが多くて…すごく新鮮でした。
こういった映画だと『悲劇の残忍な復讐者』とか、責めどころのない悲しみとかを感じることが多いのですが…今作では自業自得と感じることが多かったです。
まぁ人間は誰だって自分が1番ですから…そういう意味では、自分勝手さにすごく人間味を感じる映画だったかなと思います。
なのでどちらかといえば自分勝手・自業自得に感じるくらい人間味を感じさせるキャラがお好きな方、新鮮味のあるアクション映画をお探しの方におすすめの映画でした。
映画『ジョン・ウィック』の考察
【考察ポイント】
- ジョンのタトゥーの意味
- ウィンストンが情報を教えた理由
- ラストの犬の意味
- ジョンの別名『ババヤガ』の意味
ジョンのタトゥーの意味
『fortis fortuna adiuvat』は英語のことわざ『Fortune favors the brave(the bold)』のラテン語版で、『運命の女神は勇者に味方する』という意味があるそうです。
おそらくですがわざわざタトゥーにしていたことを思うと、ジョンにとってはこの言葉が成功の秘訣・座右の銘のようなものだったのではないかなと思います。
ちなみに…
『Fortune』は運・幸運・成功。
『brave』は勇敢・恐れない・勇ましい。
『bold』は大胆・果敢・物怖じしない・思い切ったという意味。
つまり分かりやすく言うと『成功の秘訣は恐れず、思い切って大胆に行動すること』という意味があるのだと思います。
その言葉を座右の銘にしているからこそ、ジョンはいつでも細かい計画を練らずに大胆・真っ向勝負!という感じで敵と戦っていたのではないかな。
仲間だったヴィゴもジョンのことを、昔から型破りな男・大胆不敵だったと言っていましたしね。
つまりジョンは『運命の女神は勇者に味方する』を座右の銘としてタトゥーにすることで、いつでも成功のために大胆に行動していたのではないかなと思います。
ウィンストンが情報を教えた理由
ウィンストンが仕事ご法度なコンチネンタルホテルでヨセフの居場所を教えてくれたのは、昔なじみの友人からの頼みだったからではないかなと思います。
おそらくウィンストンは、ジョンと何度も仕事をしたことがある情報屋のような人物。
しかしホテルで仕事をするのはご法度という掟があるため、ジョンがヨセフの居場所を教えてくれと頼んでも最初は教えてくれなかったのだと思います。
しかし最終的にはバーカウンターにいた女性・アディづてで、ドリンクと一緒にヨセフの居場所を記したメモを渡すことで教えてくれていました。
最初は教えるつもりのなかったウィンストンがヨセフの居場所を教えてくれたのは、ジョンが席を立つときに「今回は私用だ」と言っていたからだと思います。
ホテルで仕事をするのはご法度ですが、『友人からの頼みを聞いてはいけない』という掟はありませんからね。
ターゲットの居場所を探しているヒットマンに情報を売るのではなく、私用で人を探している昔なじみがいるから教えてあげた…ということなのでしょう。
アディがジョンに「ドリンクはサービス」と言っていたのと同じで、あくまでもサービスだったのではないかな。
つまりウィンストンがジョンに情報を教えてくれたのは仕事としてではなく、私用で人探しをしている昔なじみへのサービスだったからではないかなと思います。
ラストの犬の意味
ラストの犬はヨセフが他人から奪って売買しようとしていた子で、ヨセフに家族を奪われた者同士通じるものがあって連れ帰っていたのではないかなと思います。
おそらく犬がたくさんいたあの場所は、マフィアが管理していた非合法に動物の売買をする場所だったのでしょう。
最初にヨセフに出会った時、「犬が好き」「何にでも値がつく」と言っていたことを思うと…。
ジョンの車を奪って売ろうとしていたのと同じように、人気の品種・珍しい品種の犬を他人から奪って売買していたのではないかなと思います。
港にあるボロボロな建物の外観に反して整備されている内部の様子から考えて、合法的な場所ではないのでしょう。
傷だらけの状態のジョンがわざわざそんな場所に行ったのは、傷の応急処置をするためというのと…そこから犬を1匹連れて帰るためでもあったのだと思います。
妻から贈られた犬の代わりとかではなく…愛する存在が必要だと妻に言われたからこそ、新しく愛せる存在を得ようとしていたのではないかな。
あそこにいた犬たちも無理やり連れてこられた子たちだし、飼い主の元に帰そうにもどこから連れてきたのかも分からない状態では難しいでしょう。
それにジョンの車を奪った時のように無理やり連れ去ってきたのであれば、マフィアからの報復が怖くて飼い主が捜索願などを出していない可能性すらありますからね。
そんな犬たちを、ヨセフに愛犬を奪われた自分と重ね合わせたからこそ…ジョンは家に帰る前にあの場所に立ち寄り、犬を連れ帰っていたのではないかなと思います。
あとは「もう妻もパンジーのわんちゃんも…誰もいないあの家に帰りたくないから」という理由も、ジョン的にはあったのかもしれませんね。
ジョンの別名『ババヤガ』の意味
『ババヤガ』とはバーバ・ヤーガとも言い、ロシア民話に出てくる特殊な力を使って子供を攫い喰らう魔女のことらしいです。
そんな魔女の名が別名になったのは、ジョンの仕事の異様さ・ヒットマンを子供のようにヒネる彼に対する畏怖の意味を込めてのことだったのではないかなと思います。
ブギーマンと呼ばれるヒットマンすらも、子供のように喰らう魔女。
男性であるジョンに魔女の姿を重ねるくらい、特殊能力でも使っているのではないかというくらい圧倒的に強く・怖かったからこそそう呼ばれていたのでしょう。
鉛筆だけで人間3人を排除するようなジョンですからね。
つまりあまりにもジョンの仕事が不気味・異様・不可解だったために、民話に出てくる魔女と重なりババヤガと呼ばれていたのではないかなと思います。
ブギーマンとの違い
ババヤガはジョン個人への別名で、ブギーマンはヒットマン全体への別名だったのだと思います。
そもそも『ブギーマン』とはヨーロッパなどで有名な悪い子供を攫う鬼のことで、寝室のドアの後ろ・戸の隙間・ベッド下などの暗闇が住処だと言われているそうです。
闇からやってくる鬼を、闇夜に紛れてターゲットを狙うヒットマンに重ねて…そう呼ばれていたのではないかなと思います。
ちなみにジョンがブギーマンではなくババヤガと呼ばれているのは、ブギーマンはどこに潜むか・どんな風に仕事をするかが理解できる存在だからでしょう。
ババヤガは何を使って・どうやって仕事をするのかが分からず、人知を超えた存在だからブギーマンとは分けて呼ばれていたのだと思います。
ただ引退後のジョンは明らかに腕が落ちていたので、そういった意味ではもうババヤガではなくブギーマンと呼ばれる存在になっていたのかもしれませんね。
映画『ジョン・ウィック』の関連作品
どうしようもない悲しみから始まるストーリーがよく似ていました。
キャラの設定が似てます。ただアクションの方向性は正反対かな?
まとめ
想像していたアクション映画とは違ったテイストの映画で、少し衝撃を受けたと言うか…意外すぎて驚く部分がありました。
あと私はどちらかといえば爽快・カッコ良いアクションが好きなので、個人的には好みのテイストとは少し違ったかなと思います。
なのでどちらかといえば泥臭いアクションがお好きな方、カッコ良い・悲しいだけじゃない一風変わったテイストのアクション映画がお好きな方におすすめな映画でした!