掃除屋と少女の生き様を描いた映画『レオン完全版』。
初めて観た時は切ない歳の差恋愛系の映画だと思ったのですが…今回は複数の策士が1人のお人好しを巻き込んでいく、全く違ったストーリーに感じて面白かったです。
なので同じ映画で全く違った感想を抱けるような映画がお好きな方、何度観ても楽しめるようなアクション映画をお求めの方におすすめしたい映画になっています!
映画『レオン 完全版』の作品情報
あらすじ
寡黙な掃除屋・レオン。
いつもどおり仲介人・トニーから仕事を請け負い、淡々と仕事をこなして自宅に帰ると、アパートの廊下に隣部屋の不良少女・マチルダが座り込んでいました。
マチルダの頬には傷があり、どうやら家族から良い扱いは受けていない様子。
さらにマチルダの父親はクスリの売人をしており、横領の疑惑をかけられて麻薬捜査官・スタンから詰め寄られていました。
しかしレオンは特に干渉することはなく、いつもと変わらない日々を過ごすレオンでしたがその翌日、マチルダ一家を麻薬捜査官たちが襲撃。
買い物に出ていたおかげでただ1人難を逃れていたマチルダは帰る家を失い、咄嗟に隣に住むレオンに助けを求めるのですが…。
予告動画
動画リンク
映画『レオン 完全版』の感想
【面白ポイント】
- 映像が独特
- 悲劇のヒロイン・マチルダ…?
- 複数の策士と1人のお人好し
映像が独特
今作は重さ・コメディ・恋愛が入り混じるストーリーや演出にマッチした、独特な映像がすごく印象的でした。
色々な要素がギュギュっと詰まっているのにゴチャゴチャすることなく、それぞれのシーンに沿った空気感・雰囲気を楽しめる映像で良かったです。
アクションシーンも押し付けすぎていないので違和感なく見やすいですし、グロさよりも怖さ・冷酷さの方が強いので、ストーリーと合わせて楽しめるような映像でした。
なのでアクション映画が苦手という方でも、観やすいような映画になっていたのではないかなと思います。
ただグロさが弱めといっても血・ケガの描写はガッツリとあるので血自体が苦手な方、グロい映像が極端に苦手な方には不向きかもしれません。
悲劇のヒロイン・マチルダ…?
初めて観た時には気にならなかったのですが、改めて観返してみるとマチルダは少し違和感のあるキャラクターでしたね。
初めて観た時から情緒不安定だなとは思っていましたが、今回は情緒不安定というよりもワザと周りの大人たちをからかっているようなキャラクターに感じました。
何というか全ては暇つぶしというか、早く命を落としたがって自暴自棄になっている感じが、家族を失ったこととは関係なく映画冒頭からありましたね。
上手く言えないんですけど愛を求めているというよりも、自分が命を落とす形でエンディングを迎える悲劇のヒロインごっこに酔っている感じ。
レオンがかまって楽しい日々を過ごしている間はいいんだけど、少しでもヒマになるとすぐに刺激を求めて悲劇のヒロインごっこを始めている感じがしました。
同じ映画を観て、ここまでヒロインの印象がガラッと変わるのも珍しいですよね。
個人的には映画の雰囲気にはあっていて、2度目の視聴も新鮮な感覚で楽しめたので良いキャラクターだったとは思いますが…何ともしっくりこない感じはありました。
なので悲劇のヒロインごっこに酔っているようなヒロイン、周りの人間を引っ掻き回すようなタイプのヒロインがお好きな方にはおすすめですが…。
そういったタイプのヒロインが苦手という方には、もしかしたら不向きなのかなと思います。
複数の策士と1人のお人好し
マチルダの印象が変わったことで、映画全体の印象も複数の策士が1人のお人好しを巻き込んでいくようなストーリーに変わりました。
初めて観た時には孤独な掃除屋と、復讐に燃える少女との歳の差恋愛がメインの映画という印象を持った気がするのですが…。
2度目の視聴では人の良すぎるレオンが、マチルダや周りの人間に巻き込まれて人生を狂わされていくようなストーリーに感じました。
レオンの初仕事に関しても、行動を起こしたのはあくまでもレオンの意思ではありますが、恋人の親子ゲンカに巻き込まれた結果という感じでしたし…。
トニーはレオンを支えているように見せかけて、レオンに仕事を斡旋して稼ぎながらレオンの稼いだ金すらも着服しているようにしか見えませんでした。
自分の私利私欲のためにお人好しなレオンを利用する人々と、そんな人々を信頼して愛しているレオン。
主人公と周りの人間の立場は逆ですが、印象としては映画『氷の微笑』に近かったです。
1人の悪女が周りの人間を振り回し巻き込んでいくストーリー、人によって解釈が変わるような雰囲気がよく似ていました。
なのでどちらかといえば氷の微笑がお好きな方、お人好しが策士に幸せそうに振り回される映画がお好きな方におすすめな映画でしたね。
映画『レオン 完全版』の考察
【考察ポイント】
- レオンとマチルダの関係
- ラストで観葉植物を植える意味
- トニーの店にいる老人
- レオンが牛乳を飲んでいる理由
レオンとマチルダの関係
マチルダは自分の悲劇のヒロインごっこのためにレオンに愛されようとしているだけで、実際にはレオンのことを心の底から愛しているわけではないと思います。
キライとか好きなフリをしているというわけではないのですが、命をかけて愛しているというわけでもなく…何というか恋している自分に酔っているという感じでしょうか。
そして「大人の掃除屋に恋した復讐に燃える少女」という悲劇のヒロインごっこを盛り上げるために、好きだからとレオンを振り回す行動をとっていたのではないかな。
反対にレオンはそんなマチルダを心の底から愛していたと思います。
レオンは過去の想い人とのことを引きずりながらも、そんな想い人と同じように父親に苦しめられているマチルダに出会った時から惹かれていたのではないかな。
だからこそスタンたちに家を襲撃されている時にも助けたし、見捨てることなく面倒を見続け、最後には命を懸けて守り通したのでしょう。
なのでマチルダはレオンのことを特別愛してはいないけど、レオンはマチルダのことを心の底から愛しているという温度差のある関係だったのではないかなと思います。
ラストで観葉植物を植える意味
ラストでマチルダが観葉植物を植えていたのはレオンのことを愛してはいなかった、レオンのことを忘れようとしているからこその行動ではないかなと思います。
レオンはあの観葉植物を友人として大切に世話をして、どこに引っ越しても連れて行き、最後にはマチルダと同じように守って一緒に脱出させていました。
レオンにとってはマチルダと同じくらい大切で、どんな危険があろうとも守り通していた観葉植物を…マチルダは学校の敷地内に植えます。
特別な思い入れがあるわけでもない、いつかは卒業する学校の敷地内に植えたのは、レオンが大切にしていた物を引き継ぐ意思がなかったからではないかなと思います。
悲劇のヒロインごっこの続きとして観葉植物を学校までは持ってきて地面に植えて、やってあげた気になってそれらしいセリフは言うものの…。
おそらくレオンのように丁寧に世話をする気はなく、そのままレオンの思い出と共にそこに捨て置く気なのでしょう。
なのでラストで観葉植物を植えていたシーンには、マチルダはレオンのことを愛していなかったという悲しい事実が込められていたのではないかなと思います。
トニーの店にいる老人
トニーの店奥に座っている老人はトニーの先代、トニーの前に掃除屋と依頼人を繋ぐ仲介屋をしていた人物なのではないかなと思います。
おそらくトニーの血縁者で、すでに引退して店をトニーに任せているものの昔からの習慣でずっと店にいるのでしょう。
もしくはあの老人はレオンの父親という可能性もあるかもしれませんね。
年老いて掃除屋を引退した後、レオンが自分のもとを離れないように人質代わりとしてトニーがその父親の面倒を看ているのではないかなと思います。
レオンとしてはトニーの善意と受け取っているかもしれませんが…。
あの老人については全く語られていなかったので詳細は不明ですが、ちらほら映り込んでいたことを思うと、あの2人の関係者であることは間違いないと思います。
レオンが牛乳を飲んでいる理由
レオンがずっと牛乳を飲んでいるのは子供時代の習慣がそのまま残っているから、つまりレオンの中では時間が止まったままだからだと思います。
おそらくレオンは身体に良いからという理由で、幼い頃から牛乳を飲んでいたのでしょう。
そして19歳の時に思いがけず想い人を失い、その父親を手にかけ…彼の中での時間がその瞬間で止まってしまっているのだと思います。
街を出たのに心はずっと故郷にいて、見た目は歳をとっても中身はずっと19歳のまま。
だから風邪を引かないようにと帽子を被り続け、変わらずにずっと牛乳を飲み続けているのではないかなと思います。
映画『レオン 完全版』の関連作品
1人の女性に振り回される男性という関係性がお好きな方におすすめです。
まとめ
初めて観た時とは印象がガラッと変わっていて面白かったです。
同じ映画なのに自分の年齢や環境によって映画に対する感想がここまで変わるのはすごく新鮮で、また自分の状況が変わった時に観返したいなと思うような映画でした。
なのでどちらかといえば何度観ても楽しめるようなアクション映画がお好きな方、年齢・状況によって感想がガラッと変わるような映画がお好きな方におすすめです!