『マスカレード』シリーズ2作目の映画『マスカレード・ナイト』。
魅力的な謎・闇深い犯人に翻弄されながらも、前作をより分かりやすさがUPしているなぁと感じる部分が多くて…良いんだけど、少し好みが分かれそうな映画に感じました。
どちらかといえば分かりやすいミステリー映画をお求めの方、人間の闇が詰まった犯人像がお好きな方におすすめ!
映画『マスカレード・ナイト』の作品情報
あらすじ
ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュになった山岸尚美。
今日も今日とて、人の目・顔を嫌う宿泊客/秋山久美子からの「窓から見える広告看板をなんとかしろ」という無茶な要望にも、知恵を絞って笑顔で対応します。
その仕事ぶりは優秀な人材を求めるロサンゼルス支店へ行かないかと推薦されるほどでしたが…ロスに行けるのは、優秀なホテルマン/氏原祐作と山岸のどちらかだけ。
一方、トリマーとして働くロリータ服を着た妊娠中の独身女性/和泉春菜が、自宅でタイマー式感電機によって亡くなるという事件が発生。
事件発覚は、警察にも通報者の身元が分からない『匿名通報ダイアル』への「人が亡くなっているかもしれない」という謎めいた通報からでした。
通報者・交際相手につながる証拠は一切なく、捜査が難航すると思われた時…捜査本部に『密告者』と名乗る人物からFAXが届きます。
「12月31日、ホテル・コルテシア東京のカウントダウンパーティー/マスカレード・ナイトに犯人が現れるので、必ず逮捕してほしい」と書かれたFAX。
警察は再びホテルへの潜入捜査を決意し、前回の潜入捜査でフロント係をした刑事/新田浩介を呼び出します。
新田は早速フロント係として潜入を始めますが、教育係になった氏原に「もうフロント係としてお客様と関わるな」と厳しく指導されていました。
不倫にホテルを利用している男性/曽野昌明に対して、ホテル初利用の妻/万智子と息子/エイタの前で軽率な発言はするなと。
その頃、山岸はレストランで誰にもバレずに婚約者にサプライズプロポーズがしたいという宿泊客/日下部篤哉からの相談を受け、なんとかしようと思案中でした。
そんな時、山岸と新田の前にやってきた新田の元相棒の刑事/能瀬。
能瀬は新田に「和泉は幼い頃の傷が原因でスカートが履けなかった」ことを報告、山岸に新田がそのことを相談すると、交際相手の趣味で着させられていたのではと。
しかし山岸は多忙で…次は日下部の婚約者/狩野妙子が「アメリカに住む彼のプロポーズを断りつつ、キレイに別れたい」と相談にきます。
一方、フロントには偽名を使う女性/中根緑、曽野の不倫相手/貝塚由里、大きなキャディバックを背負った客/浦辺幹夫、仮装をした客も続々とチェックインして…。
予告動画
動画リンク
映画『マスカレード・ナイト』の感想
【面白ポイント】
- 魅力的な謎
- 闇深い犯人
- 前作より分かりやすさUP
魅力的な謎
マスカレードシリーズの謎は全てが分からない・全てが怪しいというタイプのミステリー映画で、すごく魅力的な謎だったと思います。
前作よりも事件がシンプルに、それぞれの事件の被害者・関係者についてもさっくりとした紹介だけなので情報が増えすぎることなく…。
何というか全体的にごちゃごちゃすることなく、前作よりものめり込みやすさを感じました。
それでいて密告者という第三者の人間がいて、ちゃんと謎に難解さとか深みが生まれていて良かったです。
前作もそうだったけど、登場人物と同じように謎に翻弄されながら楽しむのも面白いし、第三者の視点から自分なりに推理しながら楽しむのも面白い…そんな映画でした。
キャラクター目線からも楽しめる、第三者視点からも楽しめる魅力的な謎だったと思います。
ただ前作はミステリー+お仕事要素の両方を楽しめる映画だったけど、今作はお仕事要素はそこそこで、ミステリーメインの映画になっていました。
2人の主人公が仕事でのキャリアを積み、レベルアップしていたからでしょうが…前作のお仕事ストーリーがお好きだった方には、物足りなくなっているかもしれませんね。
ただその反面、前作以上にミステリーだけに没頭できるようになっていたので結果的には良かったのかなとも思います。
闇深い犯人
前作でも結構犯人の犯行動機や背景に闇深いものを感じましたが、今作の犯人もなかなかに闇深かったですね。
女性の肉体で、社会的には男性として生きている犯人。
大切な妹を見知らぬ男の暴力と警察の配慮なき取り調べによって失って、妹の影を追い求め続けて犯行を繰り返すという犯行動機がなんとも切なかったですね。
あと妹が自ら命を断つ瞬間を目撃したトラウマから、人が命を落とす瞬間を見られない・遺体を見られないがゆえのタイマー付きの凶器。
何というか前作以上に人間の闇深さというかやりきれなさ・切なさがあるし、もう擦り切れすぎて壊れかけているような危うさを感じました。
犯人の印象としては映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』に少し似ていたかな。
自身のトラウマから犯行を繰り返し、何かを求めてずっと繰り返して壊れていく…そんな切ない堂々巡りのような犯行動機がよく似ていたかなと思います。
個人的にはすごく好きな闇深さ・犯人像でしたね。
ただ今作の方が闇深さが強くなっていた分、前作に比べると共感しやすさ・感情移入しやすさはもしかしたら減っていたかなと思います。
私はどちらの犯人像も好きでしたけど、人によっては好み・共感しやすさがかなり変わってくるかもしれませんね。
前作より分かりやすさUP
前作から続けてマスカレードシリーズを観続けていたせいかもしれませんが、前作よりも分かりやすさがアップしているのをすごく感じました。
謎に関しても前作に比べると関係者がかなりすっきりとしていて、ゴチャつきにくさを感じたし…。
ラストにはちゃんと謎の種明かしも丁寧にされていて、前作よりもストーリー・ミステリー共に理解しやすく分かりやすくなっていたように思います。
反面、伏線になるんだろうなというセリフや事件の関係者まで分かりやすくなってしまっていて、前作で感じた謎の難解さは薄れてしまっていたかな。
日下部がロサンゼルス支店の人間であること、中根・曽野家族が事件に関わっていることもかなり早い段階で気付けてしまいましたし…。
もちろんそのあとに翻弄するストーリーもあるのですが、何というか前作を観た後だと…この後にひっくり返るんだろうなというのが分かってしまうのが多かったです。
そう思ってしまうくらい、ミステリーの展開・犯人像・ストーリーの持って行き方が前作とほぼ一緒だったかなと思います。
まさか前作とほとんど一緒なわけないだろという、心理的盲点を付いているのだとすれば流石だなって感じですが…。
あまりにも前作と似ているというかほぼ同じストーリー展開だったために、ラストの方ではかなり肩透かしな感じがありました。
逆にそれが良いという方もいるとは思いますが…前作が好きだったという方でも、今作に関しては好みが別れそうかなと思います。
個人的には前作が面白かった分、今作にもかなり期待していたのですが…同じクオリティではなく、同じようなストーリーで来れられて個人的には少し残念だったかな。
ただ分かりやすさがUPしていること自体は、前作がわかりにくかったという方にとっては視聴後にモヤモヤ残るものが少なくなっていて良かったのだと思います。
なので前作が苦手だったという方だと、今作の方が見やすさがUPしていて純粋な面白さを感じやすくなっていて良いのではないかな。
映画『マスカレード・ナイト』の考察
【考察ポイント】
- 密告者/曽野&貝塚の犯行動機
- クレジットカードと偽名
- 犯人/中根緑(森沢光留)の犯行動機
- 犯人が山岸の時計を使った理由
- 被害者/和泉春菜の妊娠
- 客/秋山久美子(田中みな実)の意味
- ラストシーンの仮面舞踏会の意味
- 最後の「無理です」の意味
密告者/曽野&貝塚の犯行動機
密告者/曽野万智子は友人であり夫の浮気相手/貝塚由利への復讐のために、貝塚はお金と面白さのために計画を実行に移していたのではないかなと思います。
ちなみに曽野のスマホに森沢が電話できたのは、エイタの写真の画角からマンションの部屋がバレ、そこから郵便物などで電話番号がバレたから。
貝塚たちが森沢を脅迫できたのは、貝塚が出会い系アプリで森沢の写真を見たことがあったからだと思います。
曽野の息子/エイタの犯行動機
おそらく曽野の息子/エイタは望遠レンズを使って、自室から向かいのマンションの部屋を覗く・写真を撮る趣味があったのだと思います。
エイタが匿名通報する時に部屋番号は言えたのに、和泉の名前は言わなかったことを思うと…おそらく和泉のストーカーとかではなく、覗き込んでいただけでしょう。
和泉が亡くなったときにもカーテンが開いていたことを思うと、彼女はカーテンを片側だけ開けておく習慣のあるタイプの人間だったのでしょう。
だから部屋の中が覗きやすくて、エイタにとって和泉は覗き先としてお気に入りの人物ではあったのだと思います。
そしてレンズを覗き込みながら彼女の姿を見て、時には写真を撮り…他人の部屋・生活を覗くことに、面白さや楽しさを感じていたのでしょう。
度々和泉の部屋を覗き込んでいたから森沢が交際相手であることも森沢の犯行も知っていたし、写真を撮って犯行の証拠を持っていたのではないかな。
つまりエイタは他人の部屋・生活を覗き見することを楽しみ、背徳感を感じながらも面白がっていたから和泉の部屋を覗いていたのではないかなと思います。
曽野万智子の犯行動機
曽野は最初こそエイタのためにと事件に巻き込まれていただけでしたが、最終的には貝塚への復讐のために喜んで計画に参加していたのだと思います。
そもそも曽野はエイタから犯行現場を目撃したこと・犯人の写真を撮っていることを告白され、困惑して仲の良い貝塚に相談したことで今回の事件に巻き込まれていました。
おそらくエイタと同じように犯行を目撃したからには通報しなければと思いつつも、通報すればエイタの趣味がバレて罪に問われると思い…曽野は動けずにいたのでしょう。
でも1人で考えても答えは出ず、浮気をしているような夫に相談することもできずモヤモヤして…高校時代からの友人である貝塚に相談することにしたのだと思います。
なんとかエイタの犯罪行為がバレないようにしつつ、警察に犯人を捕まえてもらう方法はないかと。
その結果、貝塚は犯人を脅してある場所に呼び出しつつ、その場所に警察を呼ぶことで犯人を逮捕してもらえば良いと提案したのではないかなと思います。
証拠の写真さえくれれば犯人との交渉は全部自分がやる、その代わり手間賃として犯人を脅した際に得た金銭は自分がもらうとでも言われたのでしょう。
危険すぎる行為に最初こそ曽野は抵抗したでしょうが…エイタを守るため、犯人を知りながら通報しない罪悪感から解放されるために最終的には了承したのだと思います。
しかし貝塚は犯人と金銭の受け渡しをする場所として「仮装パーティーがある使い慣れたホテルがあるから」とでも言ってホテル・コルテシア東京を指定。
その結果、夫が不倫相手との逢瀬にホテル・コルテシア東京を使っていることを、GPS・レシート・クレジットカード明細などで知っていて曽野は気付いてしまいます。
貝塚が夫の不倫相手だと。
おそらく貝塚がホテルに来た時に曽野の旦那と接触していたことを思うと、何がしかのアピールを前からしていたのだと思います。お前の旦那は私と不倫しているぞと。
でも曽野は気づかずにいたのですが、夫が不倫で使っているホテル・貝塚が使い慣れているホテル・今までの言動が全て1本の線に繋がり…気付いたのだと思います。
そして夫と不倫しながらも何喰わぬ顔で友人関係を続けていること、今までの言動から貝塚が自分をあざ笑っていたことに気付き、並々ならぬ怒りを覚えたことでしょう。
しかし怒りに震えながらもエイタを守るために計画を進めいていた曽野に、犯人から電話がかかってきました。
脅迫のために送りつけた写真の画角からマンションの部屋がバレ、マンションの郵便物から曽野の電話番号がバレてしまったのでしょう。
自分の存在がバレていることに焦り、保身のために計画を全て素直に話した曽野に対して、犯人は計画続行すればお前だけは助けてやると逆に脅迫されます。
しかしお前だけは助けてやるという文言から貝塚は無事では済まないと読み取った曽野は、貝塚への復讐心からその脅迫に喜んで乗ることにしたのでしょう。
おそらく森沢から指示されたことは貝塚の計画をそのまま続行すること、パーティーの日の仮装にロリータ服を着せることくらいだと思います。
自分の手を汚すことなく貝塚が消えてくれる、自分は脅迫されていただけだから重い罪には問われない…こんなに割の良い復讐はないと思ったのではないかな。
なので最初こそ事件に巻き込まれる形だったけど、最終的には夫の不倫相手である貝塚に復讐するために喜んで計画に参加していたのだと思います。
貝塚由利の犯行動機
おそらく曽野から事のあらましを聞き証拠写真を見せてもらった貝塚は、犯人に見覚えがあったから金銭と面白さのために脅迫しようと提案したのではないかなと思います。
多分だけど貝塚と曽野の夫が不倫関係になったのは、普通に出会いを求めて出会い系アプリをしていた貝塚が、たまたま曽野の夫を見つけたからではないかな。
そして貝塚は友人の夫と不倫することに優越感を覚え、さらにどんなことをしても不倫に気づかない・相手が自分だとは思わない曽野をあざ笑っていたのでしょう。
そんな経緯があり、出会い系アプリをやっていた貝塚は、犯人である森沢の写真を出会い系アプリで見かけたことがあったのではないかなと思います。
新田は仮面を被った森沢を瞳だけですぐ見つけていたし、他の男性たちも森沢のことをすごい美人と言っていたことを思うと…印象に残りやすかったほど美形なのでしょう。
だから貝塚も彼のことを覚えていた。
もしかしたらアプローチしたことがあったけど、森沢の方から断られていたまであったかもしれませんね。
だから出会い系アプリを通せば匿名のまま脅迫できると思い立ち、面白半分・金銭目的半分・ちょっとした復讐心で脅迫しようと提案したのではないかなと思います。
そして交渉役を名乗り出て、出会い系アプリで捨て垢を作った貝塚は森沢に連絡を取り、そこからは公衆電話・フリーメールで証拠写真を突きつけて脅迫したのでしょう。
金銭は証拠が残ると困るから手渡しでと言いホテル・コルテシア東京を、身分がバレないように仮面パーティーのある大晦日を指定したのではないかな。
貝塚がホテルで2部屋取っていたのも、マスカレード・ナイトの参加券を2枚ゲットするためでしょう。1枚は曽野用、1枚は自分用だと思います。
そしてペンギンの仮装と指示したか森沢に告げられていて、それを目印にしつつ…金銭はチャペルに置いておけと指示して、直接的な接触を避けていたのではないかな。
その後はパーティー会場に行くように指示し、あらかじめそこに警察も呼び寄せることで、金銭は得つつも犯人は捕まえさせて、自分の身の安全も守ろうとしたのでしょう。
つまり貝塚は犯人を出会い系アプリで見た覚えがあったから、安全を確保しつつ面白半分・金銭半分・ちょっとした復讐心から脅迫を提案したのではないかなと思います。
クレジットカードと偽名
中根緑が受付票と名義の違うクレジットカードを出したのにホテル側が何も言わなかったのは、ホテル側としては支払いさえできれば特に問題ないからだと思います。
受付票は基本的には本人確認というよりも、忘れ物・急病など何かあった時に連絡できるように記載してもらっているだけで、別に本名である必要すらないでしょうし…。
実際に偽名で予約する人間もいることでしょう。
クレジットカードに関しても支払いさえちゃんとできれば、特にそれ以上わざわざ突っ込むこともないと思います。
中根緑の場合は、特に予約していた中根伸一郎と同じ苗字を名乗っているし…別に予約していた人物と別人が来ようとも、ホテルでの待ち合わせはよくあることだろうしね。
特に女性の場合は名字を変えたくないから籍は入れていない・結婚直後で名字を間違えた・結婚直後でカードの名義変更が済んでないとかもよくあると思います。
ホテルがお客様のプライベートに踏み込むべきではないという教育だったのであれば、なおさらクレジットカードの名義に突っ込むことはないでしょう。
つまりホテル側としてはクレジットカードと受付票の名前が違おうとも、予約名・クレジットカード決済さえ済めばその他は重要視していないから触れないのだと思います。
犯人/中根緑(森沢光留)の犯行動機
大切な双子の妹/セラとキレイにちゃんと別れたくて、自分の中でけじめをつけたくて森沢は何人もの女性を手にかけていたのではないかなと思います。
10代で両親を亡くし、性同一性障害による生きづらさを感じていた森沢にとって、セラは唯一の理解者であり絶対に裏切らない大切な存在だったのでしょう。
しかしそのセラが男の無理矢理の暴力と、警察の配慮なき取り調べによって自ら命を断ってしまいました。
森沢が犯行を繰り返す理由
おそらくですが森沢は警察・犯人への憎しみよりも、唯一の支えを失った喪失感・目の前で妹を失った映像・トラウマの方が強く脳裏にこびりついていたのだと思います。
だから出会い系アプリなどで自分に近寄ってくる女性を見ては、妹と重ね合わせてしまって…ついつい交際関係へと進んでしまうのでしょう。
しかし森沢が求めているのは妹、女性側が求めているのは彼氏…2人の求める関係性はすれ違い、必ず女性側が浮気をしてしまうのだと思います。
そして女性の浮気に気付くか別れ話をされると、自分の目の前から突然消えた妹の姿がフラッシュバックして…唐突に失う恐怖から女性を手にかけてしまうのでしょう。
でもその場で生命を奪うことはしない…妹の件から、目の前で人が命を失う・突然の別れはトラウマで、できないと思います。
でも悲しくて苦しくて…森沢は女性たちを妹に見立てて、ちゃんとしたお別れをやり直そうと思い立ったのではないかな。
妹を今度はちゃんと送り出せるように時間を設けて、妹が大好きだったロリータ服を着せて、身体に傷をつけずにキレイに別れようとしていたのではないかなと思います。
それで自分の中でけじめをつけて苦しく悲しいトラウマから解放されたい、トラウマをキレイな思い出に上書きしたいと思っていたのでしょう。
でも妹ではない人を何人妹に見立てて美しく送り出そうとも、けじめはつかずトラウマは消えない…だから何度も何度も犯行を繰り返していたのではないかなと思います。
警察との勝負にこだわった理由
妹に見立てた人間を何人見送ろうともけじめがつかないことに困惑した森沢は、妹を奪った警察に復讐すればけじめがつくと思い至ったのではないかなと思います。
和泉を手に掛けた後、貝塚が自分を脅迫してきて…でも冷静に写真から撮影位置を割り出した森沢は、曽野から相手の計画・仲間の有無などを聞き出すことにしました。
そして警察へ密告するつもりだと言われた時、自分は妹をキレイに送り出すことばかりに固執して、憎い相手へ復讐していないことを思い出したのでしょう。
妹を暴力によって汚した犯人ももちろん許せないでしょうが、セラが命を断つに至った直接的な原因は警察の取り調べですからね…復讐しようと決意したのだと思います。
自分がホテルに来ることを予告しながら妹に見立てた貝塚を美しく送り出す…これで警察に復讐しつつ、妹も送り出せてけじめがつくはずと考えたのではないかな。
貝塚の命を掛けた警察と自分との勝負に勝つことで、最悪自分が捕まろうとも妹を失ったトラウマから解放されると考えたから、勝負に固執していたのだと思います。
浦辺をホテルに呼んだ理由
浦辺をホテルに呼びつけたのは、自分の身代わりとして警察と貝塚を翻弄させるためだったと思います。
警察はホテルに犯人が来ていることは分かっても犯人の顔は知らないから…和泉の交際相手を呼び出せば、そちらに目が向きやすいだろうと踏んだのでしょう。
浦辺の連絡先は和泉のスマホを回収後、中身を確認している際に知ったのではないかな。
そしてマスカレード・ナイト当日、貝塚にはペンギンの仮装が目印と告げていたので、それを浦辺に被らせることで貝塚の目も欺こうとしたのだと思います。
貝塚はペンギンの仮装をした人間がブライダルコーナーに行き、そこで金銭を置いてパーティー会場に向かうと思っているから…油断して事を運びやすくなりますからね。
そのために、まずは浦辺にホテルを一室とらせます。
しかしパーティー参加券も応募させると警察の目が行き過ぎ、すぐに最重要容疑者となってしまうため、パーティー参加券は予約しないように指示していたのでしょう。
そして浦辺が部屋に入ったらそこにペンギンの仮装と、予め自室を2人で予約していたために余っていた1枚のパーティー参加券を送りつけました。
あとは自分の身代わりに動かせつつ、大きなカバンをウェディングコーナーに置かせてパーティー会場に向かわせて、警察と貝塚を翻弄していたのだと思います。
犯人が山岸の時計を使った理由
犯人が犯行時に山岸の時計を使ったのは、もうすぐ妹のトラウマから解放される・警察に復讐できるという油断や安堵感からくるミスだったのではないかなと思います。
そもそも森沢は時計を身に着けていなかったのでしょう。
森沢が時計をつけていなかったのは、ファントムの衣装に時計が引っかかって繊維などの証拠を落とすのを避けるためか…。
もしくは時間が表示さているカウントダウンパーティーで時計をつけている=時間を気にしている=容疑者なんて警察に難癖をつけられないためかもしれませんね。
時間が迫ってロリータ服の参加者に片っ端から掴みかかっていたような警察だから、あらゆる可能性を想定して、あえて時計をつけていなかったのではないかなと思います。
時間は持ち込んでもおかしくない、スマホで確認するつもりだったのでしょう。
しかしそんな犯行準備中、たまたま山岸がやってきて自分の顔を見られてしまったために、彼女も排除しなければいけなくなりました。
ふっと見ると彼女の腕には腕時計…ケーキの件で山岸が時間にきっちりしていることを知っていた森沢は、そんな彼女の時計を見てタイマーをセットしたのでしょう。
ここまで完璧に計算尽くだった森沢がそんな油断を見せたのは、もうすぐ警察に勝てる・トラウマから解放されるという安堵・解放感からではないかな。
これが終われば妹のトラウマから解放される・警察への復讐が完成すると油断したからこそ、森沢は山岸の時計を見るというミスを犯したのではないかなと思います。
被害者/和泉春菜の妊娠
被害者/和泉春菜は森沢と交際しつつも浦辺とも浮気して、浦辺の子供を妊娠していたのではないかなと思います。
森沢は肉体的には女性ですから、和泉が妊娠するのは不可能…それに森沢が妹の代わりを求めていたのであれば、そもそも肉体関係に至ってすらいないでしょう。
イケメンの森沢と出会い系アプリで出会ったはいいものの、肉体関係がないこと・妹扱いなことに不満を抱いた和泉。
おそらくそんな時に職場のトリミングサロンに浦辺がやってきて、冴えないが自分に好意を寄せる浦辺にフラッと流れ…二股・妊娠したのだと思います。
多分だけど和泉的には本命は森沢だったのでしょう。
森沢を家に上げて、浦辺のことを家にあげなかったことを思うと、森沢の方が本命だったように思います。
しかし森沢に不満を抱いていた和泉は妊娠をきっかけに森沢に別れ話を持ちかけて、そして彼に命を奪われてしまったのではないかな。
つまり和泉が妊娠していたのは浦辺の子供で、妊娠をきっかけに森沢に別れ話をしたために命を落とす結果になってしまったのではないかなと思います。
客/秋山久美子(田中みな実)の意味
田中みな実演じる宿泊客/秋山久美子は、和泉が窓の外から覗かれていたことを示唆する伏線だったのではないかなと思います。
どんなに見える範囲内から顔・視線を排除しようとも、どこか遠くから望遠レンズを使って誰かが見ているかもしれない…ということを示唆していたのでしょう。
そもそも秋山があんなにも他人の顔や目線を気にしていたのは、モデル・女優など他人から見られる仕事をしていたからかなと思います。
仕事中もプライベート中も常に記者・ファンの視線を感じるから、ホテル内では他人の目を気にせずゆっくりしたくて、顔を排除してくれと要求していたのではないかな。
もしくは義両親と同居中で常に誰かと一緒で窮屈だから、出張中に泊まるホテルくらいでは他人の目や顔色を気にせずにいたいというパターンかもしれませんね。
つまり田中みな実演じる宿泊客/秋山久美子は、和泉が窓の外から覗かれていた伏線であるとともに、彼女なりに顔を排除したい理由があったのではないかなと思います。
ラストシーンの仮面舞踏会の意味
ラストで山岸がホテル内で仮面舞踏会を見たのは、あの瞬間、山岸がホテルマンとしての仮面を脱いだことを意味していたのではないかなと思います。
山岸はホテルではずっとホテルマンとしての仮面をつけて、日々仕事を頑張っていたことでしょう。
しかし支店への異動とはいえ、慣れ親しんだホテルを離れることになって…ずっとかぶり続けていたホテルマンとしての仮面が取れたのだと思います。
そして今まではホテル内の全てを見渡せて把握できていたのに、途端にお客様が仮面を被った異国人のように…ホテル内が仮面舞踏会のように感じたのでしょう。
そしてそんな最中、入り口からやってくる仮面をつけた新田。
新田がつけているのはお客様ではなく刑事の仮面でしょうが、最後に新田が自ら仮面を外していたのは、山岸の彼の素顔が見たいという想いからでしょう。
でもホテルマンとして他人の仮面を剥がすべきではないと思っているからこそ、自ら外してほしいという想いもあったのではないかな。
今までは刑事としての仮面をつけた新田しか見てこなかった…だから彼の素顔を見てみたい、見せてほしいと思ったのでしょう。
つまりラストシーンの仮面舞踏会には山岸がホテルマンとしての仮面を外したこと、新田の素顔が見たいという山岸の想いから見た幻覚だったのではないかなと思います。
基本的には前作のラストシーン、新田の思考と同じだったのではないかな。
最後の「無理です」の意味
新田が告白めいたことを言っているのに対し、山岸が反射的に「無理です」と答えたのは彼が嫌いとかではなく、テンパっていたからだと思います。
お客様相手ならば、自分もホテルマンの被っているから冷静に対応できるでしょう。
そして新田に対しても今までは刑事の仮面、ホテルマンの仮面をお互いに被っていたから冷静に、相棒として接することができました。
しかし新田は素顔、そして自分もレストランの予約と聞いてホテルマンの仮面を被ったのに、猛烈なアプローチで仮面を無理やり剥がされてしまいます。
だからテンパってしまって、とっさに無理ですと素の自分で答えてしまったのではないかな。
ただ新田は山岸に好意があるし、山岸の方も新田に好意があると思います…ただお互いに直接的なアプローチをしてこなかっただけでしょう。
お互いが仮面を被っていたし、ホテルマンとしての教育からお互いに相手の仮面を無理に剥ごうとしなかったから…。
新田が直接的なアプローチを開始したのは、日下部の件で山岸が「駆け引きでは気持ちは伝わらない」「素直な気持ちを伝えてはどうか」と言っていたからだと思います。
そして映画序盤でダンス教室の女性と駆け引きをしようとして失敗したから…というのもあるかもしれませんね。
しかし新田の突然のアプローチに恋愛に疎い山岸はテンパってしまって、反射的に素の自分で無理ですと言ってしまったのではないかなと思います。
映画『マスカレード・ナイト』の関連作品
今作と犯人のイメージが少し似ていたので、今作の犯人がお好きだった方におすすめです。
私はどちらかといえば1作目の方が好きだったかもしれませんね。
初めて観た時の伏線感・騙されたぁ感がすごかったです。
まとめ
マスカレード・ホテルがかなり面白かったので期待して視聴しましたが…思っていた以上に前作に似すぎていて、個人的には少し残念だったかなと思います。
ただ前作よりもシンプルで分かりやすさがUPしていたし、犯人も人間の闇が詰まっている感じで自分好みになっていたし…ちゃんと前作と違った魅力もありましたね。
なのでどちらかといえば分かりやすいミステリー映画をお求めの方、人間の闇が詰まった犯人像がお好きな方におすすめな映画でした。