とある出会いから始まる非日常を描いた映画『真夜中乙女戦争』。
独特な世界観・キャラが印象的な映画なので個人的にはあまり好みではありませんでしたが…違った視点から自分なりの考察を繰り広げるのは楽しかったです。
どちらかといえば現実離れした独特な世界観やキャラクターがお好きな方、自分なりに考察することで魅力が生まれるような映画がお好きな方におすすめ!
映画『真夜中乙女戦争』の作品情報
あらすじ
神戸から上京して一人暮らしを始めた大学生/『私』。
奨学金のためにつまらない授業を聞き、家庭教師のバイトをクビになったために職場環境最悪の夜勤バイトをして…同じことを繰り返す面白みのない毎日を送っていました。
そんなある日、なにかステキな出来事に期待していた私は大学内の『かくれんぼ同好会』というサークルに入会することを決めます。
サークル入会にあたって『先輩』の面接を受け、新歓に招かれた私はパーティーへと参加するのですが…そこでも誰とも話さず2時間壁の花状態。
そんな時、サークル入会面接で担当してくれた先輩が声をかけてくれて…それ以降、私は先輩のことを目で追うようになっていました。
そして運命の日、学校内で頻発している喫煙所爆破事件の犯人らしき謎めいた『黒服』の男を見かけた私。
奨学金のための試験をほっぽりだして男を追った私は黒服の有り余る才能を知り、そして言葉を交わしたことで彼に惹きつけられるようになり…。
予告動画
動画リンク
映画『真夜中乙女戦争』の感想
【面白ポイント】
- 独特なキャラ
- 独特な世界観
- 自分なりの楽しみ方で
独特なキャラ
普通と非日常に憧れを抱いている主人公/私、才能あふれる謎めいた男/黒服、私に想いを寄せている風の女性/先輩まで…今作は独特なキャラが多かったですね。
文章で書くとそんなに独特に感じないかもしれませんが…映像で話したり動いたりしているのを見ると、かなり独特というか一風変わったキャラばかりになっています。
やっぱり原作が小説なためか、とっつきやすさというよりかは個性・独特・詩的なキャラクター性が強いというのもあるかもしれませんが…。
良く言えば個性的でつかみどころのないキャラクター、悪く言うと言動や行動理由が理解し難いキャラクターだったかなと思います。
個人的には主人公がなぜ黒服を助けたのか、先輩はなぜ黒服に疑問を抱かないのか…その他にも理解できない言動があったりして、…ん?と思うことが多かったですね。
そのせいかストーリーにもついていけない…と感じる節があって、正直なところ個人的にはあまり好みではありませんでした。
ただ考察のために観返した時には1周目よりかは理解できるように感じたので…独特なキャラだと知った上で観た方が共感・理解しやすいのかもしれませんね。
あと私には合いませんでしたが、刺さる人には刺さるようなセリフを言うキャラクター性だったので…人によっては好きになれるキャラ達だったのではないかなと思います。
独特な世界観
最初から最後まで真剣に観たつもりなのですが…最後までずっと理解しきれない部分があるくらい、独特な世界観の映画でしたね。
他では観ることができないような独創性とか、独特な雰囲気が詰まった映画だったので一風変わった映画をお求めの方には良いのかなと思います。
ありきたりな映画は飽きた、斬新な映画を求めているという方には良いと思うのですが…。
共感しやすさとか、理解しやすさを求めている方には不向きだったかもしれませんね。
私はそもそもキャラの独特さについていけていなかったので、最初から最後までストーリーについていけずにおいていかれる感じがありました。
黒服のことも主人公のことも、真夜中乙女戦争のことも唐突で行動理由が理解しきれない節があったので…私には不向きだったのかもしれませんね。
ただ「世界なんて壊れてしまえ」と考えている人、「斬新なことが起きてほしい」と願っているタイプの人だと、共感できる世界観の映画だったのではないかなと思います。
私はどちらかといえば自分が消えたいという考え、平穏な日常が続くことを願っているタイプなので…思考の方向性が合わなかったのでしょう。
なので独特な世界観の映画ではありますが、思考の方向性がマッチする方には刺さる映画だったのではないかなと思います。
自分なりの楽しみ方で
私は正直なところ、今作は世界観もキャラもあまり刺さらず共感できなかったので…自分なりの考察を繰り広げることで面白さを見出していました。
今作はキャラの言動が独特で行動理由が理解できず、世界観も独特だったので…私は共感・理解しきれないことが多かったです。
なのでそれを逆手に取って…キャラになにか問題があったという方面で考察することで、映画に対する見方が変わって楽しむことができるようになりました。
具体例をあげるのであれば…ネタバラシのない映画『ビューティフル・マインド』感覚の考察を繰り広げて楽しみましたね。
この映画が好きという方にとっては「何だその考察は?!」とイラ立ちを覚えるかもしれませんが…個人的には自分なりの楽しみ方ができて満足です。
今作はキャラに入り込むように共感しながら楽しむのではなく、背後からふわっと見守るような第三者視点のような感覚で観るのが私には向いていたかなと思います。
印象としては映画『らせん』の楽しみ方と似ていましたね。
らせんも個人的に最後の展開が納得できず、自分なりの考察を繰り広げることで面白さを見出した映画だったので…今作とは似たものを感じました。
なので今作が好みではなかったという方でも、考察次第で楽しむことはできる余地が残された映画だったのではないかなと思います。
映画『真夜中乙女戦争』の考察
【考察ポイント】
- 全ては私の妄想・幻覚説
- 先輩のストーカーだった説
- 黒服とキスをした理由
全ては私の妄想・幻覚説
今作のストーリーがあまりにも理解できなかったので…黒服という存在・先輩との恋・真夜中乙女戦争などは全て主人公/私の妄想だったのではないかなと思います。
大学でつまらない授業・突然のバイトクビ・パワハラ上司のいる夜勤バイト・おせっかいな母親と…『私』は毎日疲れ切っていました。
だから大学内で起こっている放火事件と結びつけた首謀者の男/黒服を自分の中で作り出して、仲良くなるという妄想を繰り広げたのではないかな。
そして妄想の世界で憧れの非日常を作り上げることで、日常の不満を解消しようとしていたのではないかなと思います。
主人公にとっての見え方
私にとっては本当に起きている出来事のように見えていますが、実際は全て妄想というか幻覚だったのではないかなと思います。
黒服も真夜中乙女戦争も…私にとっては本当に起こっている出来事だけど、他の人には見えないし起こっていないことなのではないかな。
実際は黒服などおらず廃墟のような建物に一人で入り込み、誰かと話している風に独り言を話しているだけだったのでしょう。
実在の人物も時には自分の都合の良い妄想のキャラクターとして登場し、私には現実と妄想の違いがわかっていなかったのではないかなと思います。
黒服の正体
黒服は主人公の妄想のキーキャラ、自分と正反対の分身・自分を理解してくれる親友・自分を愛してくれる恋人ポジションの存在だったのではないかなと思います。
才能あふれるお金持ち、人を集め率いる才能があって、自分のしたいことを自分勝手にする男。
妄想を盛り上げるために私を面白いことに導いてくれる妄想世界の案内人であり、私にとって理想的な人物像だったのではないかな。
時には疑問を投げかけ、時に共感し…自分ができないことを一緒にやってくれる、自分と正反対な分身であり最も身近な親友が黒服だったのではないかなと思います。
そして自分にだけ愛情を注いでくれる、自分のために尽くしてくれる…恋人のようなポジションでもあったのでしょう。
私は友達がいないこと、愛されないことも気にしていたので…その両方を満たしてくれる存在を求めた結果、黒服が生まれたのではないかなと思います。
真夜中乙女戦争とは
真夜中乙女戦争とは現実世界に嫌気が刺した私が妄想世界で起こした出来事であり、現実では東京が爆破されたりはしていないと思います。
現実世界に疲れ、世界なんて壊れてしまえと思っていた私は妄想世界でその願いを叶えようとしていたのでしょう。
真夜中乙女戦争というネーミングの由来は夜勤のバイトをしていて、いつでも真夜中のように眠たいからとか…真夜中のように先が見えない人生だからかもしれませんね。
乙女なのは誰しも夢見る乙女であり、現実に不満があっても夢に縋って生きているからとか…。
誰しもが恋する乙女であるとか、誰しも世界に汚される純粋無垢な者だからという意味があるのかもしれませんね。
ただラストで東京が爆破されたことで…私の妄想は一区切りというか、終わりを迎えたのではないかなと思います。
もしかしたら現実世界で変化が起きて、妄想を見ることがなくなったのかもしれませんね。
バイトを辞めた・友達ができた・大学を辞めた・地元に帰った…どの選択肢を選んだのかは分かりませんが、真夜中乙女戦争の成功で妄想は終わりを迎えたのではないかな。
つまり真夜中乙女戦争とは妄想世界での出来事で、現実世界では起こってはいなかったけど…これをきっかけに妄想が終わり、私には何か変化はあったのだと思います。
先輩のストーカーだった説
先輩だけは黒服と違って実在の存在なのですが、私は妄想世界の先輩とごっちゃにしていたために先輩のストーカーと化していたのではないかなと思います。
ふっと興味本位で入ったサークルで先輩を見かけ、新歓などでなにかと気にかけてくれる彼女に恋した私は妄想世界にも彼女を出現させるようになっていたのでしょう。
妄想の中の彼女は私に気があって、ぐいぐい接近してくるから両思いだと思った私はどんどん現実世界の先輩と妄想世界の先輩の区別がつかなくなり…。
ついには先輩の部屋に侵入したのではないかな。
真夜中乙女戦争に反対した私が、先輩の部屋を模した部屋で目覚めてチーム常連に暴行を受けるというのは…実は現実とリンクしたものだったのだと思います。
先輩の部屋に侵入してくつろいでいた私は、彼氏と一緒に帰宅した先輩と出くわし…彼氏はストーカーである私に暴行を加え、部屋から追い出していたのでしょう。
つまりラストで先輩が東京タワーにいたのも私の妄想なのですが、あのシーンには先輩との決別の意思が込められていたのではないかなと思います。
彼氏がいて、自分を見てくれない先輩に妄想世界とは言え本音を言って、決別することで自分の恋に決着をつけたのではないかな。
つまり先輩との恋模様は全て彼女のストーカーである私の妄想だったのですが、最終的には真夜中乙女戦争と共にその恋と決別することができたのではないかなと思います。
黒服とキスをした理由
黒服とのキスには妄想世界の彼との別れを惜しみつつも、感謝の意味が込められていたのではないかなと思います。
妄想世界の住人とは言え、自分のために頑張ってくれた親友であり恋人だから…別れることの寂しさ、彼への感謝を込めてキスしていたのではないかな。
おそらくだけど私は男性も女性も好きな、両性愛者だったのではないかなと思います。
だから男性の恋人ポジションである黒服がいて、女性の恋人ポジションである先輩の2人がいたのではないかな。
そう考えると彼氏がいながら私のことも好きだという先輩のセリフは、私自身の恋模様や心情を表していたのかもしれませんね。
大学生くらいだとまだオープンにできていなかったかもしれないし、悩むこともあったでしょうから…そんな苦悩が妄想世界に反映されていたのかなと思います。
そういった苦悩・葛藤・ストレスがあったからこそ、黒服や妄想世界が生まれたのかもしれませんね。
でも妄想世界ともお別れすることになったから…最後にキスをしていたのではないかな。
だから最後に黒服とキスしていたのは愛する人との別れを惜しむものであるとともに、今までの感謝が込められたものだったのではないかなと思います。
映画『真夜中乙女戦争』の関連作品
実写を元にしているらしいですが、普通に1つの映画として面白かったです。
単品で楽しむと…ん?って感じですが、考察するとめちゃ面白いです。
夢十夜のような独特な語りが印象的でした。映画版が好きな人にはおすすめ。
まとめ
独特なキャラと世界観が印象的な映画で…正直なところ、あまり好みの映画ではありませんでした。
ただ全く違った視点から映画を観ることで自分なりの考察を繰り広げるのは楽しかったので、考察好きな方なら苦手なテイストでも楽しめるかもしれませんね。
どちらかといえば現実離れした独特な世界観やキャラクターがお好きな方、自分なりに考察することで魅力が生まれるような映画がお好きな方におすすめな映画でした。