最低男たちに復讐する女性を描いた映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』。
不快感を感じるほど最低な男に「ざまぁ」としか言いようのない見事な復讐劇が繰り広げられる映画で、女性としては共感できる部分もあって面白かったです。
どちらかといえばざまぁとなるような復讐劇がお好きな方、最低な男性に復讐する女性を描いた作品がお好きな方におすすめ!
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の作品情報
あらすじ
コーヒーショップで働く30歳の女性/カサンドラ(キャシー)・トーマス。
毎週クラブで泥酔したフリをしては男性にお持ち帰りされ、コトに及びそうになったらシラフに戻って男性を脅して行為を止めさせるということをしていました。
そして家に帰ったらベッド下に隠してあるノートに相手の男の名前と、何回目なのかを書き記すという行為を繰り返す日々。
そんな彼女も医大に通っていた頃は、能力・知識共に優秀と言われる学生でした。
しかし友人/ニーナと共に大学を中退してからは、30歳になっても実家を出る様子もなく友達なし・恋人なし、朝帰りだけが多いということで両親に心配をかけるばかり。
そんなある日、勤め先に医大時代の同級生/ライアンがやってきて熱烈にアプローチしてきたことで、彼女の日常は大きく変わることになり…。
予告動画
動画リンク
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の感想
【面白ポイント】
- 女性が共感しやすい内容かな?
- 最低男にご注意を
- 良い復讐劇だった
女性が共感しやすい内容かな?
ライアンとの恋模様からの絶望・ニーナの事件・最低男ばかりのキャラクター性が、女性が共感・楽しみやすいやすいようなテイストになっていたかなと思います。
ライアンの情熱的で純情な恋模様からの、実は最低男だったという落差なんて女性向けマンガにありそうな展開で面白かったし…。
学生時代の友人/ニーナの悲劇に関しても、同じ女性として感じるもの・考えさせられる部分があって良かったかなと思います。
もちろんニーナと同じ女性としては、アルに対して不快感を感じる部分もあったし気分的に落ち込むものがあったりもしましたが…。
そもそもそういった犯罪に巻き込まれたり後悔したりしないためにも、やっぱり泥酔するまで飲まないという自衛・自制心が大切だなと感じました。
どこでどんな犯罪行為に巻き込まれるか分からないし、過ちが起きてから後悔しても取り返しはつかないですからね。
ただ…個人的にはキャシーの最初の方の行動は美人局をしているようにしか見えなくて、なんとも言えない気持ちになりました。
酔った女性を連れ込もうという男性の行動は褒められたものではありませんが、だからって男性だけを一方的に責めるのは違うのではないかなと思うし…。
女性の中にも酔っ払ってワンナイトラブを楽しもうとする人だっているわけですから、あまりにも男性だけが悪く描かれているのには違和感がありました。
印象としては映画『それでもボクはやってない』に似ていましたね。
それでもボクはやってないに関しては男性側が冤罪に巻き込まれるという内容だったのですが、最初のキャシーの復讐にはそれと似たものを感じました。
今作に関しては男性が冤罪というわけではないですけど…だからって美人局をするのは個人的にはどうなのかなと思うフシがあったせいか似たものを感じましたね。
なのでそういった意味も含めて今作は女性向けというか…女性の方が共感・楽しみやすい映画だったかなと思います。
最低男にご注意を
何度も罪から逃れようとするアル、アルの悪さを率先して先導するようなジョー、愛より保身を優先したライアンと…今作は最低男に溢れていましたね。
最低男キャラとか、ダメ男とか憎めない部分があるなと思っていて結構好きな方なのですが、今作に関しては到底許せないタイプの最低男ばかりでした。
影では女生徒を無理やり襲っていたのに、学校・弁護士によって守られているアルはもう擁護のしようが無いほどに見事な最低男!
キャシーを手にかけたあとも、俺は悪くない・何が起こったかわからないとか言っていたし…もう笑っちゃうくらい最低でした。
そんなアルの友人/ジョーもなかなかに最低で、キャシーの遺体を隠蔽しようと提案したにも関わらず、結婚式に警察がやってきた時には何も言わずに逃げようとするし…。
ライアンも最初は良い男かと思っていたのに、過去の悪事がバレた途端あんなに愛していると言っていたキャシーを口汚く罵っていて…実に残念な男でしたね。
実際にいたらもう処されよとしか思わない最低男ばかりでしたけど、映画のキャラとして見るのであればそれぞれに個性があるし、見事な最低っぷりで良かったです。
ただし私は最終的には「最低だ!」と笑って観られましたが、人によっては嫌悪感を抱くタイプの最低男ばかりになっているので好みは分かれそうですね。
良い復讐劇だった
最初、見知らぬ男を手当たり次第に騙して縮み上がらせているときは「何してんだ…」と思いましたが、最終的には良いざまぁを感じさせる復讐劇で良かったですね。
自分の命と引換えに最低男たちを逮捕させて、過去のニーナの事件との関連性も示すことできっちり警察の手で捜査させる。
それをアルが幸せの絶頂にいるであろう結婚式当日に実行するんだから…もう合理的なだけでなく、見事なざまぁも盛り込まれていて良い復讐劇でしたね。
これで学生時代のこととはいえ18歳以上の男たちが起こした事件ですから、ちゃんと法的な裁きが与えられることでしょう。
アルとジョーに関してはキャシーの事件に関与しているので、他の人よりも罪が重いでしょうけどね。
ライアンや他の周りにいた面々に関しては、手を出していないのであればもしかしたら軽い刑罰・罰金程度で済まされてしまう可能性もありますが…。
マスコミが黙っていないでしょうから、法的ではなくとも裁きが下ることでしょう。
優秀な医者たちの最低な過去、さらにその事件が実は揉み消されていたために新しい事件へと発展したとなれば…大きく報道されるのではないかな。
どんなに名前や勤務先をぼかして報道しても、ネット社会ではどんどんどんどん個人情報がバレていくだろうから…客商売の医者を続けるのは難しくなるでしょう。
特にライアンなんて小児科医ですからね…今の職を続けるのは難しくなって、医療を離れるか人前に出ることが少ない仕事をすることになるのではないかな。
最低男たちを幸せの絶頂・高い地位から真っ逆さまに地獄に叩き落す、見事な復讐劇で個人的には好きでした。
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の考察
【考察ポイント】
- キャシーに協力する男たち
- 最後のメッセージの意味
- 最後の絵文字の意味
- キャシーのノートの意味
キャシーに協力する男たち
マディソンが酔いつぶれて目覚めた時にホテルで一緒にいた男や、弁護士の家近くに待機していた協力者風の男たちはキャシーが金で雇ったプロだったのだと思います。
最初はゴロツキや知人にお金を払って、協力させているのかなとも思ったのですが…それにしては男たちの身なりが整っていたので違うように感じました。
またキャシーはウォーカー学部長との会話で「男性を信用していない」とも言っていたので、ゴロツキや知人に協力させているとかではないでしょう。
なので個人的には彼らはキャシーが金でちゃんと雇った人材、その道のプロだったのではないかなと思います。
マディソンの時に一緒にいた男はおそらく『別れさせ屋』。
別れさせ屋なら酔ったマディソンに自然に近づきつつホテルへと連れ込むだけの技量があるでしょうし、何かあったように偽装するプロだから雇われたのでしょう。
キャシーの目的はマディソンに不倫をさせることではなく、記憶のない男性との行為に恐怖・不安を与えることだったから適任だったのだと思います。
弁護士の家の側で待機していた男は、おそらく『探偵』。
弁護士が私腹を肥やすために悪行を繰り返す人物だったのであれば、探偵が集めた情報・証拠を餌に脅そうとしていたのでしょう。
ニーナと同じように突然脅される恐怖…自分が我慢しなければいけない屈辱を与えるために。
ニーナ以外にも弁護士の被害にあった女性がいるのを知っていたのも、雇った探偵に調べさせていたからでしょう。
なのでマディソンや弁護士の時に一緒にいた男たちは、キャシーがお金でちゃんと雇っていたその道のプロだったのではないかなと思います。
最後のメッセージの意味
ラストでライアンに時間予約してまでもメッセージを送っていたのは「お前も同罪だからな」「お前も罪人だ」という意味を込めていたのではないかなと思います。
ライアンはキャシーが過去の事件について問い詰めた時、若いときの過ちだと言い逃ればかりしていました。
そしてキャシーが失踪したと聞いた後は何事もなかったかのように過ごそうと、警察にも真実を言わずにそのまま逃げようとする始末。
結婚式に参加した時にはさすがに落ち着きがないようにも見えましたが…参加している時点で、自分自身の罪に関しての自覚はなさそうですよね。
過去の動画について問い詰めた時に、そんなライアンの性根に気付いたキャシーは「お前も同罪だからな」という意味を込めてメッセージを残したのではないかな。
アルの結婚式にふてぶてしく参加しているライアンに己の罪を自覚させるため、元恋人への最後の復讐と手向けとしてメッセージを送ったのではないかなと思います。
最後の絵文字の意味
最後に『;)』とウインクの絵文字を残していたのは、キャシーの復讐が10年近くの時を経てやっと終わったことを意味していたのではないかなと思います。
キャシーは大学中退後から30歳になる今まで、ずーっとニーナの事件を引きずって生きてきました。
将来有望だったのに医者にもならずアルバイトをして、恋人もなく友人もなく、男を騙してはノートに名前と数を記すだけの人生。
そしてニーナを不幸にした憎き相手が幸せの絶頂にいることを知ってからは、そいつらにも復讐をするために行動して…やっと出会った愛する人も失っていました。
そんな過去に縛られ続けていたキャシーがアルの結婚式をぶち壊しつつ逮捕させて、過去の事件の証拠も警察に検証させることで掘り返させて…。
ただ復讐するだけじゃなくてキャシーの事件も、ニーナの事件もキレイにかたをつけることができました。
そしてキャシーはやっと過去の呪縛から、復讐から解放されたのでしょう。
命は落としたものの復讐が成功してやっとキャシーの時間が動き出したから、キャシーはウインクをしながらこの世を去っていったのではないかなと思います。
キャシーのノートの意味
キャシーがノートにお持ち帰り男を制裁した回数や名前を記載していたのは、それが彼女が自分自身にかした復讐・罰・贖罪の表れだったからではないかなと思います。
最初はニーナを無理やり襲ったアルと同じようなことをしている男たちに復讐して、行いを改めさせようとしているのかなとも思ったのですが…。
だとしたら10年もの間、憎き張本人であるアルや同級生たちに復讐しないのはおかしいですよね。
なのでキャシーがお持ち帰り男を制裁しまくっていたのは、あれがニーナを助けられなかった自分自身に対する復讐…罰だったのではないかなと思います。
そしてニーナへの贖罪の気持ちを書き記すことで自分の罪と向きあうため、もっと言えばニーナのことを忘れないためでもあったのではないかな。
キャシーが男たちを制裁する理由
キャシーが酔ったフリをしては男たちにお持ち帰りされ、その男を脅していたのは『あの日』のやり直しをしているからではないかなと思います。
ニーナの母と話している時、キャシーは自分がニーナと一緒にいなかったこと・あの場にいなかったことを後悔していると言っていました。
だからこそ、あの日のやり直しをずっとしているのではないかな。
ニーナと同じように酔った状態で最低男にお持ち帰りされることであの日と同じ状況をつくりつつ、行為を止めさせることでやり直しをしている気分だったのだと思います。
おそらくだけどニーナを失ったキャシーは、酔っているフリをしているときはニーナになっているつもりで、行為を止めるときは自分に戻っている感覚だったのでしょう。
もしあの日にこれと同じことができていればと…ニーナに対する贖罪の気持ちと、あの場にいなかった自分に対する罰として同じことを繰り返し続けていたのだと思います。
ただそんなことをしてもニーナ本人が救えるわけではないし、自分の気持ちに整理がつくわけでもないから…10年も同じことを繰り返していたのではないかな。
ジェリーへの制裁
映画冒頭のナンパ男/ジェリーへの制裁は命を奪うとかではなく、おクスリを決めていた男と同じように言葉で脅してサヨウナラしただけだと思います。
キャシーは酔った女性を連れ込んで襲おうとする男性を憎んでいましたが、命を奪うようなことはしていなかったのではないかな。
だってもし他人の命を奪ってしまったら、それはニーナを命を落とすまで追い込んだ憎むべき相手/アルと同じことをしたのとほぼ同義ですからね。
あまつさえ自分が犯人だと名乗り出ないなんて…アルと同じ行為をすることになります。
10年間もニーナのことを引きずり続けたキャシーが、アルと同じような犯罪行為をするとは思えないので、彼女が他人の命を奪うことはないでしょう。
クラブでジェリーと一緒にいた友人、後にキャシーをナンパした男/ポールも、キャシーのことを「ジェリーの持ち帰ったサイコ女」と言っていましたし…。
ジェリーが無事であり、ポールたちにあの晩のことを話したからこそキャシーがシラフのくせに酔ったフリをしてお持ち帰りされる変な女だと知っていたのでしょう。
なのでジェリーと別れた後に服や腕に赤い液体が付いていたのはケチャップかなにかで、キャシーがジェリーや他人に対して暴力を振るうことはなかったと思います。
赤ペンと黒ペンの違い
赤ペンと黒ペンで書かれた回数や名前の違いは、『泥酔しているところに声かけてきた奴』と『泥酔させてお持ち帰りしようとしてきた奴』の違いかなと思います。
ジェリーや自称小説家のおクスリ男が黒ペンだったことを思うと、黒ペンはキャシーが泥酔しているフリをしているところに声をかけてきた奴でしょう。
対してジェリーの次、おクスリ男の前に声をかけてきた奴は赤ペンで書かれていました。
その男は「髪カワイイね」「もう1杯飲む?」と普通な声掛けをしてきていたことを思うと、おそらくその段階ではキャリーが泥酔したフリをする前だったのでしょう。
そしてさらに飲むように勧めていたことを思うと、これから泥酔させてお持ち帰りしようとするタイプの男だったのではないかな。
つまり赤ペンと黒ペンの違いは泥酔しているところに声を掛けてくる男と、泥酔する前に声を掛けてきて泥酔させようとしてくる男の違いだったのではないかなと思います。
わざわざ書き分けているのは…ニーナがどっちだったかわからないからかな。
ニーナに対しての贖罪として行っている行為だから、間違ったカウントを防ぐために書き分けていたのではないかなと思います。
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まとめ
思ったより重たいニーナの事件に、女性としては不快感を感じる節もありましたが…最後はハッピーエンドざまぁに収まる映画で面白かったです。
ただ男性だけが悪く描かれている感じが強かったので、どちらかといえば女性の方が楽しみやすく共感しやすい映画だったかもしれませんね。
なのでどちらかといえばざまぁとなるような復讐劇がお好きな方、最低な男性に復讐する女性を描いた作品がお好きな方におすすめな映画でした。