命なき者と青年の人生を描いた映画『スイス・アーミー・マン』。
くだらない設定と会話で観る者を惹きつけつつ、人生観や生き様といった真面目な話まで盛り込まれた映画で、謎のまま終わっている部分は多いものの面白かったです!
どちらかといえば突拍子のないコメディ設定・世界観がお好きな方、不真面目な中に真面目さもあるような映画がお好きな方におすすめ!
映画『スイス・アーミー・マン』の作品情報
あらすじ
無人島で孤独に負けかけている青年・ハンク。
いくら助けを求めても誰も来ず、絶望して自ら命を断とうとしていた時、海岸にすでに息絶えている男が流れ着いていることに気付きます。
そしてその男から大量のガスが出ていることにも…。
まさかと思ったハンクがその男性にしがみつくと、男性はジェットスキーのような勢いでガスを出して無人島を飛び出し、どこかの海岸までハンクを運んでくれました。
そしてハンクは命の恩人ともいえる男性を抱え、海岸から森の中へと入っていくのでしたが…。
そこでも男性は孤独に悩まされ、話し相手になってくれるのは返事をしない息絶えている男性だけ、さらには水も食糧もない状態でした。
しかしそんなハンクのピンチを、またしても息絶えている男性が救ってくれて…。
予告動画
動画リンク
映画『スイス・アーミー・マン』の感想
【面白ポイント】
- 謎ジャンルな映画
- 下世話な会話が多め
- よく分からないけど面白い!
謎ジャンルな映画
基本的にはコメディな世界観・設定が多いんだけど、時折リアルな心理描写や共感しやすさがあるような…なんとも謎ジャンルな映画でした。
無人島で孤独に悩み苦しむ青年が、自ら命を断とうとするシリアス展開かと思いきや、ガスを噴き出す遺体にしがみ付いて脱出するという突拍子のないコメディ展開。
かと思えば息絶えていたはずの男性と今までの人生から恋バナ、下世話な話までしだす謎のリアルさ・共感しやすさが良かったですね。
何というかただ面白いだけじゃなく、コメディの中に人生観やヒューマンドラマ的な要素が入っているから観やすいし、感情移入のしやすさ・共感しやすさがありました。
そして色々な要素を入れているのにゴチャつくことなく、くだらなさ・リアルさ・ありえなさ・共感しやすさが絶妙なバランスで組み合わさっていて面白かったです。
なのでどちらかといえば突拍子のないコメディ設定・世界観がお好きな方、それでいて真面目な話も盛り込まれているような映画がお好きな方におすすめな映画でしたね!
下世話な会話が多め
今作はなかなかに大人向けと言いますか…かなり下世話な話・ドストレートな表現が多めな映画なので、好みは別れるかもしれませんね。
個人的には頭を空っぽにして笑えるようなくだらなさで好きなのですが、お子様には確実によろしくないですし…大人でも人によっては引いてしまう内容かもしれません。
そしてこういったのが大丈夫という方でも、会話の表現・内容的に一緒に観る人に注意が必要です。
家族・恋人で観るとちょっと気まずくなる可能性が高いですし、友人同士でもよほど親しい仲か下世話な話ができる仲でないと厳しいかな…。
特に序盤~中盤にかけては普通の恋バナ・真面目な話をしていても、最終的には下世話な話に流れていくので注意が必要です。
印象としては映画『テッド』と似ているかな。
話の節々に人によっては引いてしまうレベルの下世話な話が度々出てくる感じが、すごく似ていたかなと思います。
なのでどちらかといえば下世話な話をゲラゲラ笑って聞ける方、下世話な話をしながら真面目な話もする映画がお好きな方におすすめな映画でしたね!
よく分からないけど面白い!
メニーはなぜ蘇ったのか・ガスを発生させていた理由といった不思議な現象の数々は、結局分からないまま終わってしまっているのですが…謎の満足感はありました。
世界観や設定はコメディ、セリフは下世話、でもラストではシリアスな空気感で締める謎ジャンルの映画でしたが、終わってみればとにかく面白い映画でしたね!
ただ、これが最高!ここが良かった!という決め手はなかったように思うので、好みは別れるのかもしれません。
個人的にはよく分からないけど面白かった!と思えましたが、人によっては何だこれ?という状態で終わってしまう映画だと思います。
なのでどちらかといえば独特の世界観や空気感で映画を楽しめる方、ふわっとした終わり方でも満足できる方におすすめの映画です!
映画『スイス・アーミー・マン』の考察
【考察ポイント】
- メニーが動いた理由
- ラストでハンクが嘘をついた理由
- ラストの意味
メニーが動いた理由
実はハンクはネクロマンサー的な能力を持っている一族の生まれで、メニーはハンクの能力によって蘇ったゾンビだったのではないかなと思います。
最初はメニーは動いていなくて全てはハンクの妄想とも思ったのですが、サラの娘がメニーと会話していたことを考えると…実際に動いていたのでしょう。
腹話術でハンクが話していたという考え方もできなくはないけど、だとするとその後メニーが突然話さなくなるのは不自然です。
想い人の前で腹話術をするのが恥ずかしいのだとしても、2人で逃げ出した後は会話を再開させていてもおかしくないはずですからね。
そして…ハンクの父親。
彼は最初こそハンクを止めていたものの、途中から意味深にうなずいていたり笑っていたりしたので、おそらくメニーが動くことを分かっていたのでしょう。
つまり父親はネクロマンサーのようなことを生業にしている人で、その息子であるハンクはその後継者だったのではないかなと。
ただハンクはその家の生まれでありながら、おそらく才能がなかったために父親からずっと「能無し」と言われていたのでしょう。
しかし孤独に負けそうになったとき、やっとネクロマンサーとしての才能が開花し、メニーを蘇らせることができたのだと思います。
だからラストでメニーが動き出したとき、ハンクの父親はちょっと嬉しそうに笑っていたんじゃないかな…息子の才能の開花を喜んでいたのでしょう。
なのでハンクはネクロマンサー的な能力を使って、メニーを蘇らせていたからゾンビのように話したり動けたりしていたのではないかなと思います。
ラストでハンクが嘘をついた理由
ラストでハンクがメニーと名乗っていたり、父親のことを避けたりしていたのは、生まれ変わったつもりで人生をやり直そうとしていたからだと思います。
父親に能無しと言われ、想い人の隠し撮りを待ち受けにするようなハンクではなく…メニーとして、全く新しい人生を生きたかったのではないかな。
しかし純粋にサラに恋していたメニーの想いを守るため、そしてメニーに見られても恥ずかしくない自分でいるために、結局ハンクだと名乗り出たのでしょう。
なので1度は人生をやり直したいという想いからメニーと名乗っていたけれども、最終的には自分はハンクだとサラにも警察にも本当のことを話していたのだと思います。
ラストの意味
ラストでハンクがメニーを海に解き放ったことには、メニーらしい人生を生きてほしい・自分らしく自由に…という願いが込められていたのだと思います。
人前で遺体であるメニーと話したり友人だと名乗ると変人扱いされてしまうから、昔のハンクだったら絶対にしないことでしたが…。
変人扱いされてもいいから、メニーという人間が存在していたことを皆に知ってもらいたかったのでしょう。
そしてその上でメニーには自分らしい、嘘をつく必要のない自由な生き方をしてほしいと願って海に解き放ったのではないかなと思います。
映画『スイス・アーミー・マン』の関連作品
お下品めなお話でゲラゲラ笑いたい方におすすめです。
まとめ
不真面目さと真面目さが入り混じる映画で、謎は多いものの面白かったです!
ただふんわりと終わっている部分、世界観・空気感を活かしたがために説明不足になっている部分もある映画なので、好みは別れるかもしれませんね。
どちらかといえば突拍子のないコメディ映画がお好きな方、不真面目さと真面目さが入り混じる映画がお好きな方におすすめの映画でした!