切ない歳の差恋愛を描いた映画『愛を読むひと』。
歳の差恋愛の切なさを描くだけではなく、時代的な切なさまでストーリーに絡んでいる…ただの恋愛映画というだけでは語れない魅力が詰まっている映画でした。
どちらかといえば切ない恋愛映画がお好きな方、歳の差恋愛・時代的な背景がある恋愛映画がお好きな方におすすめなです!
映画『愛を読むひと』の作品情報
あらすじ
1985年、ドイツ。
体調を崩して家に帰ることもできなくなった15歳の少年・マイケルは、21歳年上の女性・ハンナに介抱してもらったことをきっかけに恋心を抱くようになります。
そしてハンナはそんなマイケルの想いを察し…関係を持つようになりました。
初めての女性に戸惑うマイケルに、ハンナは優しく女性との付き合い方を教えながら何度も逢瀬を重ねていきます。
そんなある日、ハンナから本の朗読を頼まれたマイケル。
最初こそ朗読を恥ずかしがっていたマイケルですが、ハンナを楽しませようとだんだんと朗読に力が入っていくようになります。
そして『朗読したらベッドに行く』というルールを決めてからは、本と2人だけの穏やかな日々を送ることになるのですが…。
予告動画
動画リンク
映画『愛を読むひと』の感想
【面白ポイント】
- 年上女性×少年の恋愛ストーリー
- 映画『シンドラーのリスト』と合わせて観たい
- 切ない結末…
年上女性×少年の恋愛ストーリー
冒頭は年上女性×少年の出会い・恋模様を描いたストーリーで、ティーンズラブのような感覚で観られる映画でしたね。
すごく王道な出会いなのに不純な関係が進んでいって…でも心情的には純情という矛盾が、すごくティーンズラブマンガのようだなと思いました。
だからといってセクシーシーンばかりを押し付けることはなく、頼れる年上女性に惹かれていくマイケルにも、少年を愛したハンナの想いにも共感しやすくて…。
あくまでも中盤から終盤にかけての切ないストーリーがメインだと思うのですが、序盤の恋愛ストーリーからしっかりと楽しむことが出来ました。
なので不純だけど純粋なティーンズラブのような恋愛映画がお好きな方、歳の差恋愛がお好きな方におすすめしたい恋愛ストーリーです!
シンドラーのリストと合わせて観たい
時代的な背景が似通っているためか、映画『シンドラーのリスト』と少し似た部分がありつつ、両者の魅力をさらに高めてくれているように感じました。
シンドラーのリストが迫害されたユダヤ人視点からその時代を描いた映画だったのに対し、愛を読むひとは看守側の視点から描かれた映画だったので…。
シンドラーのリストではただただ悪者だった看守に対する印象が、愛を読むひとでは少し変わってきます。
良くないことをしていたことに変わりはありませんが、時代が悪いというか…やらざるを得なかった人もいるというか…。
時代的な背景に関してはそこまでツッコまれてはいませんが、心情に関してはしっかりとつくられていたので、裁判シーンでは考えさせられるものがありました。
なので愛を読むひとが気に入った方にはシンドラーのリストを、シンドラーのリストがお好きだった方には、ぜひ愛を読むひとを観てみていただきたいです。
切ない結末…
歳の差恋愛を描いた恋愛ストーリーから、時代的な裁判を描いたストーリー…そんなストーリーの結末は実に切なかったですね。
弁護士を夢見る傍聴席の少年、咎人となった被告人席の女性。
お互いが一方通行な手紙のやり取り。
すれ違いと恋心から自ら命を絶つハンナ。
何というか…報われない切ない結末でしたね。
印象としては映画『ミリオンダラー・ベイビー 』に少し似ていたかもしれません。
前半が輝いていただけに、中盤からどんどんツラくなってストーリー展開…そして結末がひたすらに切ない感じなんか特にそっくりでした。
なので切ない結末がお好きな方にはおすすめの映画ですが、ハッピーな映画をお求めの方には不向きな映画じゃないかなと思います。
映画『愛を読むひと』の考察
【考察ポイント】
- なぜマイケルは証言・面会しなかった?
- なぜハンナは自ら命を絶った?
- なぜハンナの墓に娘を連れて行った?
- なぜハンナは2両目に乗ったことを怒った?
なぜマイケルは証言・面会しなかった?
ハンナが無罪になる証言を持っていながら、マイケルが面会に行ったり裁判で証言しなかったのは、ハンナとの関係を他人に話したくなかったからだと思います。
もちろんハンナが文字を書けない・読めないことを隠したがっているから、ハンナの意思を尊重したいという考えもあるのかもしれませんが…。
個人的にはそれよりも少年時代のひと夏の恋とはいえ、犯罪者の女性と関係があったことを知られると、弁護士としての将来に影響すると考えたのではないかなと思います。
彼女が読み書きできないことを証言するためには、彼女との関係について話さなければならなくなりますから…。
中年女性の罪を弁護士志望の少年が救う!
ひと夏の恋はこのためだった…?!
こんな感じで世間にあることないこと言われる可能性が高いと思ったからこそ面会もせず、彼女との関係を隠したまま生きていくことを決めたのではないでしょうか。
マイケルは自分の将来とハンナの無罪を天秤にかけて、自分の将来を選んだ…だからハンナとの関係を証言せず、面会もしなかったのだと思います。
なぜハンナは自ら命を絶った?
マイケルは自分から離れたがっているけど、まだ自分のことを愛していると気付いたから…マイケルとの関係を完全に断つために、ハンナは自ら命を絶ったのではないかな。
何年も面会に来なかったのに朗読テープを送ってきたり、手紙の返事は送らないのに出所後の面倒を見ていたことから、マイケルはまだハンナへの想いがあるのでしょうね。
そして手紙でロマンス系の朗読を頼んだり、朗読テープを頼りに文字の勉強を一生懸命していたハンナも…まだマイケルへの想いがあるのだと思います。
つまり2人は両思いなんですよね。
ただ少年時代にハンナよりも自分の将来を選んだ負い目から、マイケルはハンナを忘れようとしているというか…愛してはいけないという想いがあるように感じました。
だからこそ朗読テープは送っても面会には行かず、出所後は関係を断とうとしていたのだけれど…愛しているがゆえに、どうしても関係を切れずにいたのでしょうね。
ハンナはそんなマイケルの想いに気付いたからこそ…「愛してくれただけで満足」と自ら命を絶ったのではないかなと思います。
1度は無期懲役を言い渡された大罪人…そんな自分がマイケルの側にいては悪影響になると、身を引こうとしたのではないでしょうか。
マイケルと出会ってすぐの頃は感情的で、裁判中も正直過ぎる部分があったハンナですが、文字を勉強する内に冷静な考え方を手に入れていたのかもしれませんね。
だからこそ自分との関係を切りたがっていながら恋心を引きづっているマイケルの想いを察して、自ら身を引こうと命を絶ったのではないかなと思います。
なぜハンナの墓に娘を連れて行った?
マイケルの想いに気付いたハンナが自ら命を絶ったことを知ったからこそ、2度と同じことを繰り返さないために過去のことを娘に話そうと墓まで来たのだと思います。
ハンナから離れようとしながら恋心を引きづり、どっちつかずな態度をマイケルが取り続けたために…ハンナは自ら命を絶ってしまいました。
そして娘も「父親(マイケル)が自分と距離を取っている」と悩んでいたことを語っていたので、娘もマイケルのどっちつかずな態度の被害者だったのでしょう。
おそらくハンナへの想いを引きづりながら他の女性と結婚したこと、そして娘が生まれたこと…なのにハンナの想いに負けて別れてしまったこと…。
それらのことに負い目を感じたマイケルは、娘にどう接していいのか分からずにどっちつかずな態度を取っていたのかもしれませんね。
ただハンナは間に合わなかったけれども…娘とはまだやり直すチャンスがあります。
大切な人だけではなく娘まで失わないようにと、ハンナの墓前でハンナとの過去を打ち明けることで、娘と距離を取っていた理由を明かそうとしていたのではないかな。
なぜハンナは2両目に乗ることを怒った?
マイケルがあえてハンナの乗る電車の2両目に乗った時、ハンナは「自分との関係を周りの人に知られたくないから2両目に乗った」と思い、怒ったのではないかな。
「私を避けて2両目に乗ったくせに!」と言っていましたし…何度も会っているのに外で会おうとはしないから、自分と外で会わないようにしていると思ったのでしょう。
そのくせ、その後にもノコノコと女の家にやってくる不誠実な男。
そんな思い込みからハンナは腹を立てて、マイケルに対してあんなにも感情的に怒っていたのでしょう。
おそらくハンナもマイケルが好きだったからこそ、自分との関係を隠そうと外で自分を避けた不誠実なマイケルが許せなくて…悲しくて怒ったのだと思います。
映画『愛を読むひと』の関連作品
思ったよりも読みやすい文章なので、小説が苦手な方にもおすすめです。
まとめ
歳の差恋愛を描いた普通の恋愛映画かと思いきや、時代的な背景を絡めながら報われない恋模様を描いた映画で…とてもボリュームがありましたね。
かと言って飽きることはなく、2人のキャラクターにそれぞれ共感しながら切なくなりつつ、ストーリーを楽しむことができました。
報われない恋愛映画がお好きな方、歳の差恋愛・時代的な背景を絡めた恋愛映画がお好きな方にイチオシの映画です!