つくられた閉鎖空間に生きる男の生き様を描いた映画『トゥルーマン・ショー』。
トラウマになるくらい怖い設定・ストーリーの映画ではありますが、魅力的なキャラにちゃんと共感・感動もできるようになっている名作映画です!
どちらかといえば自分自身が揺らぐほどのインパクトがある映画がお好きな方、歪んだ真っ直ぐな愛情・感情を描いた映画がお好きな方におすすめ!
映画『トゥルーマン・ショー』の作品情報
あらすじ
小さな島で保険会社のセールスマンとして働く平凡な男/トゥルーマン・バーバンク。
しかしこの世界は製作者/クリストフによってつくられた、人間のリアルな人生を世界中に放送する『トゥルーマン・ショー』という番組でした。
妻/ローレンから友達/マーロンまで全員用意された役者、天気・ラジオまですべて操作された世界…何も知らないのはトゥルーマンだけ。
しかし製作側のトラブルが重なり、トゥルーマンはこの世界に疑問を持ち始めます。
そして大学生時代に周囲によって引き裂かれた想い人/ローレンが、「この世界も周りの人間も全ては作り物」と言っていたことを思い出し…。
動画リンク
映画『トゥルーマン・ショー』の感想
【面白ポイント】
- トラウマになるくらい怖い
- 製作者・クリストフにも共感できる
- ラストは感動する
トラウマになるくらい怖い
トゥルーマン・ショーは基本的にコメディ・ヒューマンドラマ系の映画ではあるのですが、結構トラウマになるくらい怖い一面も持ち合わせています。
私自身、初めてトゥルーマン・ショーを観たのは子供の頃だったのですが…自分もつくられた世界の住人?監視されている?とトラウマになっていた記憶がありますね。
そして自分は普通の生活をしているつもりだけど、実は幻想世界に生きていて年齢・性別・状況・現在地すらも勘違いしているのではないかと恐怖していた時期があります。
トラウマといってもフッとしたときに怖くなる程度でしたが…でも幼心にしっかりと残るぐらいインパクト・斬新さ・リアルさ・恐怖があったのは確かです。
家族・友人・恋人のすべてが偽物、成功も失敗も全ては用意されていたもので努力は無駄だったと、自分の今までが全て否定されるのはめちゃくちゃ怖かったですね。
なのでどちらかといえば人間の怖さが詰まったインパクトのある映画がお好きな方、主人公の揺らぎ・恐怖・不安定さが感じられる映画がお好きな方におすすめ!
逆に精神が不安定になるような可能性がある怖い映画が苦手な方、純粋過ぎる幼い子供がいる家庭では注意したほうが良いかなと思います。
製作者・クリストフにも共感できる
基本的にクリストフは自分勝手にトゥルーマンの人生を全国放送している加害者側なのですが…個人的には彼にも共感できる部分がありました。
クリストフにとってトゥルーマンは自分の番組にとって大切な役者・商品であると共に、自分の庇護下にある子供のような存在でもあったと思うんですよね。
「彼を幸せにしているのは自分」「彼を守らなきゃ」という支配欲・責任感…あとは歪んでいるものの親心のようなものがあったのではないかなと思います。
生まれる前、そして出産からから30年間ずっと見守ってきた存在ですからね…本当の自分の子供のような存在になっていたことでしょう。
だからこそ手放したくないというか、彼が巣立っていくのは心配だし不安だし…ここにいれば守ってあげられるという発想にも繋がっていたのかなと思います。
本当の親子であれば会話・ふれあいでコミュニケーションを取るのに、彼らは一方的な支配・コントロールという関係だったから歪んでしまっただけで…。
何というかトゥルーマンのことを愛している・大事に思ってる・外の世界は危険という思いやる気持ちだけは、本物だったのではないかなと思います。
大切な存在がいる方だと…この心配性すぎるくらいの愛情とか、旅立つことの寂しさとかは共感していただけるのではないかな。
印象としてはマンガ『ハッピーシュガーライフ』に少し似ていましたね。
ハッピーシュガーライフとは関係性こそ違うものの狂気じみた愛や、守りたいという純粋に歪んだ想いはよく似ていたかなと思います。
なのでどちらかといえば子供・家族・ペットなど守りたい大切な存在がいる方、歪んでいるものの真っ直ぐな愛情を描いた映画がお好きな方におすすめしたい映画でした。
感動のラスト
ラストでトゥルーマンが笑顔でお決まりのセリフを言うシーンは、すごく感動しました!
泣けるとか、どんでん返しがあるというわけではないのですが、鳥肌がブワッと立つようなめちゃくちゃ良いラストだったと思います。
トゥルーマン・ショーを観ている人たちと一緒に「よっしゃ!」と笑って、トゥルーマンに称賛をプレゼントしたくなるようなラストでした。
怖いシーンもあるし切ないシーンもあるし、ラストも一概にハッピーとは言い切れないものはあるけど…すごく笑顔で終われるラストではあったと思います。
リアルさ・面白さがあるし、彼の今後を考察する楽しみまで与えてくれるようなラストでしたね。
なのでどちらかといえば鳥肌が立つような感動するラストがお好きな方、ハッピーエンドで終わる映画がお好きな方におすすめな映画です!
映画『トゥルーマン・ショー』の考察
【考察ポイント】
- 最後の警備員のセリフの意味
- 指でクロスをつくる意味
- 妻/メリルの真意
- トゥルーマンの最後の挨拶の意味
- トゥルーマンのその後
最後の警備員のセリフの意味
トゥルーマンの解放に感動していたはずの警備員がラストで「チャンネル変えろよ」「番組表は?」と言っていたのは、番組が終って興味を失っていたからだと思います。
トゥルーマンのグッズを揃えるようなコアなファンだと、友達と喜び・悲しみ・思い出話をシェアするのかもしれませんが…一般大衆の反応はこんなものなのでしょう。
「あー面白かった。他のチャンネルで何かやってるかな?」「終わったなぁ。後番組はなにやるんだろ?」くらいの感想しかないのだと思います。
特に人間の人生を本人に無許可でコントロールし、エンターテインメントとして放送する番組が当たり前に30年間も放送され続けた世界ですからね…。
例えば彼がテレビで特集されたり出演したりすれば観るけど、彼の今までの人生を不憫に思ったり今後の人生を心配したりするほどの思い入れはないのだと思います。
何というか他人の人生はあくまでもエンタメとして楽しむものであって、他人の人生そのものには無関心というか…すぐに興味を失ってしまうのでしょう。
現にトゥルーマン・ショー放送30周年の間に、父親含めてテレビに写ろうとする侵入者は数多くいましたが…彼を救出しようとしたのはローレンだけでしたからね。
なのでラストの警備員のセリフには、一般大衆の飽きやすさ・無関心さ・冷酷さみたいな皮肉めいた意味が込められていたのではないかなと思います。
指でクロスをつくる意味
指をクロスさせる『Fingers crossed』には、『成功を祈っている』というポジティブな意味と『嘘をついたけど神様許してください』という懺悔の2つの意味があるそうです。
つまり愛する人との生涯を誓う結婚式で妻/メリルが指をクロスさせていたのは、トゥルーマンを愛していないのに結婚することを懺悔していたからだと思います。
成功を祈っていると花嫁がするのは少し違和感があるから、トゥルーマンも写真を見て何かに懺悔しているとすぐに気付いたのでしょう。
番組内の演出・演技ではあるものの、メリルは最初のインタビューで「トゥルーマン・ショーは自分の本当の生活」と言っていたから…。
演技だけど演技じゃない結婚に苦悩した結果、指をクロスさせることで愛していない人との結婚を神に懺悔していたのではないかなと思います。
そしてトゥルーマンが手術の予定があるというメリルに「指をクロスさせてね」と言った時に、彼女が驚いた表情で振り返っていたのは意味を測りかねていたからでしょう。
「手術頑張ってね」という意味で言っているのか「それも嘘なんだろう?」という意味で言っているのか測りかねて、何とも言えない表情をしていたのだと思います。
ただ振り返ってみたらトゥルーマンが笑顔で言っていたから、ポジティブな意味だと受け取ってメリルもすぐに笑顔になっていたのではないかな。
なのでFingers crossedには成功への祈りと懺悔の2つの意味があるからこそ、トゥルーマンは嘘に気づき、メリルは不安げな顔をしていたのだと思います。
妻/メリルの真意
妻/メリルはトゥルーマンの妻として出演することで人気者になる野望を持ち、自分の人生をトゥルーマン・ショーに捧げる契約書に同意した女優だったのだと思います。
おそらく契約書にはトゥルーマンに真実を言わないこと・商品のCMをすること・クリストフの指示に従うこと・肉体関係の同意などが書かれていたのでしょう。
だからベッドシーンは映像こそ映し出さないものの、恋人・夫婦としてメリルは違和感がないように役割をこなしていたと思います。
そしておそらくですがこの契約書に同意できる人物だけが、トゥルーマンの恋人役・妻役になる資格を得られるのでしょう。
だからこそ契約を交わしていないローレンにトゥルーマンが好意を持った時には、半ば無理やりに近い形で引き剥がしていたのではないかな。
つまりメリルはオーディションに受かっただけでなく、人気者になるために自分の人生を捧げる契約書に同意したからこそ妻役になっていたのではないかなと思います。
ただやはり神の前で愛を誓う結婚式だけは…抵抗感や思うところがあったためか、指をクロスさせて神に懺悔していたのでしょう。
トゥルーマンの最後の挨拶の意味
トゥルーマンがラストで「会えないときのためにこんにちは、こんばんは、おやすみ」と言っていたのは、お馴染みのセリフで番組を締めるためだったのだと思います。
おそらくですがトゥルーマンは閉じ込められていた不満・嫌悪・恐怖などはあったものの、今までの人生や他人が嫌いになったわけではないのでしょう。
自由な人生ではなかったけど、自分は自分らしく生きていたし…。
クリストフもただトゥルーマンを見世物にするのではなく、親のような目線で見守ってくれていたことを、彼との思い出話から察することができたのでしょう。
さらにカメラの向こうではもっと多くの人が自分を見守っていること知ったからこそ…少しの感謝と皮肉を込めて、笑顔でいつものセリフを言っていたのだと思います。
見守ってくれる人がいなければ、自分は現実世界のこと・番組のことを何も知らない状態で放り出されていた可能性があったわけですからね。
自分自身で世界の違和感に気付くまで見守ってくれたこと、全てが偽物で誰からも愛されていないと思っていたが…知らない誰かには愛されていたことを知ったからこそ…。
今までありがとうという少しの感謝と、この番組はこれで終わりですという皮肉を込めて…笑顔とお決まりのセリフで番組をキッチリ締めたのでしょう。
つまりトゥルーマン・ショーは主人公失踪で放送中止されたのではなく、主人公卒業で番組終了という意味を込めてお馴染みのセリフを言ったのではないかなと思います。
トゥルーマンのその後
トゥルーマン・ショーから解放されて自由になったものの、優しさと笑顔の少ない世界・思い通りにならない人生に苦悩することが増えるのではないかなと思います。
まぁ…最初の内は夢見ていた未知の世界への冒険、思い続けていたローレンとの再会による喜び・希望にあふれていることでしょう。
しかし現実世界はトゥルーマン・ショーの世界のように優しくなく、嘘・犯罪・危険に溢れていて、皆が皆、トゥルーマンを優しく迎えてくれるわけではないと思います。
「トゥルーマンだ!」と追っかけてくる視聴者・メディアがいるでしょうし、30歳にして全てを失って知らない世界で生活するのは、かなり苦労することでしょう。
なのでトゥルーマン・ショーの世界から脱出こそしたものの、現実世界での危険・好奇心・不安にさらされて、苦悩することが増えるのではないかなと思います。
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まとめ
幼き頃に観たトラウマ映画であり思い出深さもある映画ですが、やはり何度観ても面白い名作ですね。
怖さ・リアルさ・斬新さ・面白さがちょうどよいバランスで保たれている映画で、色々な形で人の心に残る映画なのではないかなと思います。
なのでどちらかといえばトラウマになるくらいインパクト・狂気のある映画がお好きな方、人間らしさのある映画がお好きな方におすすめな映画でした!